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次亜塩素酸水狂想曲
さて、前回ブログにしたのがモーニングショーに鶴見大学歯学部教授の花田氏が登場して、ご自身の持論を大いに語ったというものだった。
なぜこんなまわりくどい言い方をしたかというと全く賛同できなかったからである。御覧になった歯科関係者でフムフム!なるほど!!これは腑に落ちた!という人がいたらどういう所だったかを教えて頂きたい。
この番組の中で花田氏は
次亜塩素酸(電解)水でうがいをしている
と発言しており、
専門家が新型コロナウイルスに次亜塩素酸水が効くかのような誤認を与える可能性を指摘したのだが・・・・
【悲報】
— spee@SNS distance (@spee_dentalblog) 2020年5月26日
口腔ケアのスペシャリスト、全国ネットのテレビで次亜塩素酸水でうがいをしていると発言してしまう。
本当にちゃんとした科学者なんでしょうか・・・ pic.twitter.com/0dYdeFjChe
恐ろしい返信の嵐
このツイート、またこのツイートに紐付けしたツイートがかなり拡散されて、それに応じてもの凄い数の返信が来た。
その中で多かったのが
歯科医院で普通に治療で使っているのに何がわるいのか?
そういう治療法があるだろ?
というものである。
このブログの長年の読者だったり歯科関係者ならおわかり頂けるだろうが、次亜塩素酸水は私が知る限り全ての商品が薬機法を通過していない。
薬機法を通過していないということは薬事承認を受けていないということになる。つまり国内では医薬品ではないという扱いである。
薬事承認を受けていない場合、使用は医院と患者の自己責任においてということになるはずだ。
医院は薬事承認を得ていない商品である事、利点や欠点について充分説明し、患者が納得して使用を承認した場合使用する事ができる。
薬機法に関しては以下のブログが詳しいので読んで頂きたい。
次亜塩素酸水 フンムだっ!フンムーッ!! - 暇な歯科医師 よたろうのブログ
未承認の場合の広告は厳しく制限されており、今回の花田氏の発言はこれに抵触するのではないかと指摘しているのである。
また、こういった薬事未承認の商品を医院のサイト等に載せる場合、以下の医療広告ガイドラインを遵守する必要がある。
Q2-13 未承認医薬品、医療機器を用いた治療については、広告可能でしょうか。
A わが国の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「医薬品医療機器等法」という。)において、承認等されていない医薬品・医療機器、あるいは承認等された効能・効果又は用法・用量が異なる医薬品・医療機器(以下「未承認医薬品等」という。)を用いた治療について、限定解除の要件を満たしたと判断される場合には、広告可能です。
ただし、国内で承認されていない未承認医薬品等を自由診療に使用する場合は、医療広告ガイドラインに記載された限定解除の要件として、具体的には、以下のような内容を含む必要があります。
(未承認医薬品等であることの明示)
・ 用いる未承認医薬品等が、医薬品医療機器等法上の承認を得ていないものであることを明示すること。
(入手経路等の明示)
・ 医師等の個人輸入による未承認医薬品等を用いる場合は、その旨を明記すること。また、同一の成分や性能を有する国内承認された医薬品等があり、その効能・効果で用いる場合であっても、入手経路について明示すること。個人輸入等により入手した場合は、その旨を明示すること。合わせて、厚生労働省ホームページに掲載された「個人輸入において注意すべき医薬品等について」のページ(※)を情報提供すること。
(※)https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/healthhazard/
(国内の承認医薬品等の有無の明示)
・ 同一の成分や性能を有する他の国内承認医薬品等の有無を記載し、その国内承認医薬品等に流通管理等の承認条件が課されている場合には、その旨を記載すること。
(諸外国における安全性等に係る情報の明示)
・ 当該未承認医薬品等が主要な欧米各国で承認されている場合は、各国の添付文書に記載された重大な副作用やその使用状況(承認年月日、使用者数、副作用報告等)を含めた海外情報についても、日本語で分かりやすく説明すること。・ 主要な欧米各国で承認されている国がないなど、情報が不足している場合は、重大なリスクが明らかになっていない可能性があることを明示すること。
まず最低限でも、薬事未承認である事を明記しないといけないのだが、明記しているサイトを今までみたことがない。また成分や欠点などについても記載がおそらく求められるが、成分を詳しく書いているのを見たことはないし、良いことばかりしか書いていない。
なかには、次亜塩素酸水を否定するなんて医療者じゃない!
ニセ医者だ!(歯医者だけどな)
という返信をしてくる人さえいた。
NITEの報告
そうやってTwitterでバトルしていたら独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)の次亜塩素酸水に対する中間結果が発表された。
NITEは色々な製品を評価する経済産業省の一機関?である。
発表資料(PDF)
https://www.nite.go.jp/data/000109490.pdf
一応一番下に資料を付けておく
2020年5月29日時点では
次亜塩素酸水の新型コロナウイルスへの有効性は確認されていない
消毒液の空間噴霧は推奨されない
ということが記載されている。
また噴霧による健康被害の可能性も示唆されている。
色々な施設で玄関に次亜塩素酸水の消毒液がおいてあって、それで手を消毒しないと気まずい雰囲気になる。
また、たまに噴霧している施設もありそういった施設は避けてきてが、このファクトシートにより噴霧する事に関する危険性が周知されて噴霧がなくなるといいなと思っている。
まとめ
次亜塩素酸水は無害なのに消毒効果があり凄いものなの!
という御意見を沢山頂いた。
しかし、そんな都合の良い薬剤などない。
そう思い込ませる業者の巧妙な宣伝に引っかかっているのだ。
次亜塩素酸水を希釈して使えば口の中には全く害がない、飲めるという返信もあったが、次亜塩素酸水は希釈せずにできたてを大量に使うのがルールなのに、そういった事すら守らず使用している人もいるようだ。
そんなのほぼ単なる水道水と同じでしょ?
それでも意見を曲げずに次亜塩素酸水をごり押しする人を今後
「次亜酔(じあすい)」
と呼ぶことにした。
さて、次亜塩素酸水を使って商売している歯科医院
この中間報告にも懲りずに延々と新型コロナウイルス対策を謳う次亜酔なら医療広告ガイドライン違反で通法するべきではないだろうか?
追記(2020/06/03)
現在、このNITEの発表をうけて次亜塩素酸水の業者が一斉に効果はある!うちの製品は効果はある!という発表をしている。
しかし、実験内容や文章内容には信頼性に欠ける事項が多く注意が必要ではないかと思われる。
これなんかもなぜ今回ウイルス液と次亜塩素酸水の液の比率が1:19になったのか、とか色々と疑問点がある。
まずCOIがない状況での適切な評価でなければ信用することは出来ないだろう。
追記(2020/06/05)
本日文科省が学校での次亜塩素酸水の噴霧をしないよう注意喚起を行った。
https://www.mext.go.jp/content/20200604-mxt_kouhou01-000004520_1.pdf
追記(2020/06/11)
NITEのファクトシートが修正されました。
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-2.pdf
ページ数が多いので1ページだけアップしておく。
今回、かなり次亜塩素酸水の生成や販売についての問題点を細かく記載しており、これはマジで次亜塩素酸水に取り組んでいく事を明らかにしたということではないだろうか。
参考資料(NITEファクトシート5/29)