目次
ブロックしてもしても出てくる広告
さて、当ブログはGoogle adsenceによる広告を表示しているのだが、歯科医院の広告は全てブロックしている。
特定の歯科医院に肩入れしないようにするものである。
ただし、広告出稿は際限ないので気付くと表示されててブロックするの繰り返しである。
もう1つ、必ずブロックしているのが歯科に関する怪しいホワイトニング材料やサプリなどである。
以前はあまり見かけなかったが、最近google adsenceで数多く見かけるようになりブロックしてもブロックしても湧いて出てくる。
何回ブロックしても出てくる広告に対して非常に腹が立ってきたので、それなら本当に効果があるものなのか調べてやろう、というのが今回の企画である。
注:このページはadsenceを貼り付けていません。
今回苛立った広告
今回ブロックのイタチゴッコになっているのが以下の広告である。
これをみて興味が湧く人もいるのか、不安になっちゃうセンスとしか私には思えないのだが、皆さんは如何だろうか。
広告に貼り付けられているリンクから商品説明をみてみる
https://pizaman.club/2021/04/16/nosh-day2/
追記:リンク先がおそらくこの記事のせいで削除されました。
そのため、以下の魚拓サイトをご参照ください
いきなりの煽り
いきなり、
一般的なマウスウオッシュや歯磨き粉は口が臭くなる原因になっているって知ってますか?
という文句からスタートする。
また、
一般的な市販品には悪玉菌を殺菌できる成分が入ってはいけない、と薬事法で決まっている
と書いてある。
自分は今までそこまで市販のマウスウオッシュや歯磨剤の成分を気にしたことがなかったのだが、これは気になるので早速amazonの奥地に向かった。
Amazon.co.jp 売れ筋ランキング: マウスウォッシュ の中で最も人気のある商品です
おそらくこの医薬部外品のマウスウオッシュが一般的な市販品ということになると思われる。
早速左上のリステリントータルケアの成分をチェックすると色々入っていることがわかる。
薬効成分は塩化亜鉛とイソプロピルメチルフェノールのようだ。
イソプロピルメチルフェノールは殺菌剤としての効果があるとネットに書いてある。
同じくamazonで入手できるコンクールFだとどうだろう。
コンクールFにはグルコン酸クロルヘキシジンが含まれており、明らかに殺菌剤と明記されている。
一般的な市販品には悪玉菌を殺菌できる成分が入ってはいけない、と薬事法で決まっているというのは嘘
ということになる。
では次は歯磨剤をみてみよう。
これもamazonで売っているものをセレクトしてみる。
チェックアップは薬効成分がフッ化ナトリウムだけで、一応発泡剤として界面活性剤が含まれている。
ということで殺菌成分は入っていないようだ。
では、歯周病に効くと謳っているGUMはどうかというと塩化セチルピリジニウムなどの殺菌成分が含まれている。
これから、医薬部外品であっても殺菌成分をしっかり入れる事はできると考えられる。
以下の花王のサイトをみると、医薬部外品は治療というよりは防止・衛生を目的としたもの、という区分のようだ。
「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」にはどんな違いがあるの?|商品の成分表示の基礎知識|乾燥性敏感肌のための生活情報 お肌ナビ|花王株式会社
だから、歯や歯肉が悪くなったらといって、医薬部外品のマウスウオッシュなどでなんとかしようとしても、治療が目的のものではないので良くはならない。
どちらにしても、一般的な市販品には悪玉菌を殺菌できる成分が入ってはいけない、と薬事法で決まっている、というのはおかしくないだろうか?
歯科医院のサイトにも記載あり
なお、サイトに界面活性剤は悪だから、界面活性剤フリーの歯磨剤を使わないといけない!などという事を書いている自然派?の歯科医院がある事を確認している。
そこには界面活性剤を使うと口臭の原因になる、と書いてある。
おそらくここら辺の内容を含めて、この商品説明は既存の商品では口臭が酷くなる、と説明している可能性がある。
https://www.kamata-dc.com/tooth-brushing-pill
根拠を色々と調べてみたのだが全くわからなかった。
ご存じの方は教えて欲しい。
また、研磨剤もエナメル質が削れて象牙質が露出すると書いてあるが、これに関しての論文も自分には見つけられなかった。
基本的に摩耗だけでエナメル質はそこまで削れないと思う。
セメント質と勘違いしていないだろうか。
私には全く理解ができなかったが、これは一般的な理論かどうか教えて欲しい。
煽ってからの商品提示
長々と最初の煽りに引っかかったが、やっと商品名にいきついた。
商品名はnösh
ウムラウトが面倒なので以後noshと記載する。
2か月2箱で10000円以上するなかなかの金額だ。
粉末を溶かして使用するタイプで色はお茶のように見える。
商品の効果説明でびっくり
商品の効果説明だが、よくありがちなモニターの感想で、口腔内の前後写真が添付されている。
口臭なのになぜ口腔内写真が載っているのか意味がわからなかったが、見たら一目瞭然だった!!
歯がめっちゃしろくなってるうううう!!!
歯の色は、歯の表層に沈着している汚れ(ステイン)によるものあるが、歯の象牙質自体の色が強く影響している。
象牙質は歯の表層ではなくエナメル質の内側に存在する。
そのため歯科で行われるホワイトニングはエナメル質を過酸化水素で処理して象牙質色をマスキングすることにで行われている。
つまりnoshにも酸が入っていないと話が合わない。
過酸化水素によりしみたり痛みが出たりするリスクがあるのだが・・・一切そういうこともないようだ。
過酸化水素処理ではなく、フォ・・・・処理・・・おっと。
歯の色だけに凄く注目してしまいがちだが、舌苔も非常に綺麗になっていることに注目しなくてはならない。
舌苔とは舌の上にくっついている汚れである。
健康な若い人でこんな舌苔がついているのはあまり見られない。なぜなら会話をしたりご飯を食べたりするときに舌が動いて色々な所とこすれて舌苔がつかない自浄作用が働くからだ。
もし、noshだけでこんなに舌が綺麗になるとすれば大発見である。
舌の汚れは口腔全体の汚れを反映しているという論文もあるぐらいだし、
私達歯科医療従事者はなかなか落ちない舌苔を舌ブラシなどで擦りながら落とす。
それがうがいだけでこんなに綺麗になるのが事実だとすれば凄い薬剤ということになる。
こんな汚れみたことない
また、口腔内の汚れがどれぐらいとれたかをアピールするものもある。
歯科医師をやってきてすでにかなりのキャリアがあるが、口腔内を掃除してこういうものが取れてきた経験がほぼない。
相当長い期間歯磨きをしていない口腔内が汚染されている患者の口腔ケアぐらいではないとこんな大きな汚れは取れるイメージがない。
食渣か乾燥痰か・・・。
この写真の汚れの正体がわからない。
普通に食事をして歯磨きしている人でこんな汚れは残るとは考えづらい。自浄作用が働くからだ。
しかもこの汚れが擦りもせずうがいで取れるらしい。
これはまたびっくりだぜ・・・
清掃器具をつかわずにこんなに何かがとれるなんて・・・口の中の組織が溶け出してるんじゃないか?と思わざるを得ない。
そして、このサイトではこの黄ばみ成分が口臭の原因だと書いている。
が、私は患者の口腔内をケアしてきてこんな黄ばみ成分は今まで見たことがない。
正直ゆすぐだけで臭いも消えて歯も白くなるとしたら歯科医院での歯周治療もホワイトニングも必要ない。
そして、ここまで歯が白くなるホワイトニング材料は見たことがない。
突如出てくる歯科医
さらに押しまくってくる。
歯科医の先生にご意見を伺いました!
で、伺った意見が載ってない。
完全に専門職の名前と顔載せれば信用上がるだろ的な??
この先生、当然調べさせて頂いた。
よくみると、歯科医師と歯科衛生士のダブルライセンス持ちで、ポールダンサーらしい。もうよくわかんない。
北海道出身なのか、札幌で歯科衛生士専門学校を出た後に北海道医療大学を卒業しているらしい。
自費が多そうな東京の歯科医院で働いているようだ。
スタッフ|恵比寿の歯医者 デンタルクリニックピュアデザイン 審美歯科 インプラント 矯正歯科 ホワイトニング
よく、こんなうがい薬に名前と顔を貸す気になったね?
お小遣い足りないの?
さらに芸能人が使ってます!
最近こういうのでよく見るのが、芸能人が手に持ってポーズとってるやつだが、今回の商品にもある。
今回はなんと
梅宮アンナさん
完全にステマの片棒を担がされてると思うんだが・・・。
こういうの金銭的にうま味があるのかね?
ダメ押しのエビデンスを提示してくる
そして、この材料は凄い事をさらに推すためにエビデンスがあることを提示してくる。
どうも日本語で論文があるらしい。早速私は医中誌(医学系の和文論文検索サイト)を検索して見ることとした。
とりあえず、日本皮膚科学会雑誌と日本薬学会第133年会がヒットするはずである。
シメン-5-オール
でキーワード検索すると1つしか見つからないし、明らかに口臭ではない。
シメン-5-オールは別名イソプロピルメチルフェノールらしい。
o-シメン-5-オールとは…成分効果と毒性を解説 | 化粧品成分オンライン
そのため、イソプロピルメチルフェノールで検索してみると、今回はある程度の件数がヒットした。
一番最初にヒットした論文がまさに口臭予防効果に関する論文であり、これを読んでみるのが一番良いと判断した。
皮膚科学会雑誌と薬学会第133年会を求めて他の論文もチェックしてみたが、発見する事は出来なかった。
よく考えたら皮膚科学会雑誌に口臭原因菌の殺菌の論文が載るはずがないよな?そうだよな?
そういうことで、nosh売ってる業者さん、これ読んだら論文送ってください。
最後の砦
最後の砦である日本歯科衛生学会の論文を入手した。
医中誌ではまだin pressの状態で現在ネット上にはないので某大学に入手依頼した。
入手を依頼した先生、快く提供して頂いた先生、本当に感謝します。
さて、論文だがn=7と被験者数が少ない。
そのためか臨床報告という区分になっているのかもしれない。
実験方法の要旨
今回用いた洗口剤は以下の市販されている4種類である。イソプロピルメチルフェノールが入っているのはLI-IPとなる。
が、どうもLI-IPというのは誤字で正しくはLS-IPのようだ。文章中はすべてLS-IPとなっている。
他の3種類は塩化セチルビリジニウム単体か、それに何かが付加されたものとなる。
実験のスケジュールとしては全ての被験者が全ての洗口剤+水を使用する。洗口剤試用期間中は口腔清掃禁止。
計測項目は色々あるが、今回の話に関連した所を簡単に抽出すると
舌苔、歯垢付着、歯肉炎(Gingival Index)
口臭:口臭官能検査+揮発性硫黄化合物濃度(VSC)測定
口腔内の細菌数(咳嗽後の吐出した検体を5倍希釈→寒天培地に培養)
こんな所だろうか。
結果の要旨
数字に関しては原文をご確認頂きたい。
1)揮発性硫黄化合物濃度(VSC)
イソプロピルメチルフェノール含有のLS-IPでは、VSCが使用2日で1/10程度になり有意に減少している。
2)舌苔
洗口液による有意な変化無し
3)歯垢
洗口液による有意な変化無し
4)歯肉炎
洗口液による有意な変化無し
5)唾液中の口腔内細菌数
洗口液による有意な変化無し
考察(今回のブログに関連するところ)
イソプロピルメチルフェノールは比較的強い殺菌効果を有し、口臭を改善する効果がある、ということは間違いないようだ。
LS-IPでは、VSCで有意な改善硫化水素で改善傾向が認められた。LS-IPに殺菌成分として配合されているイソプロピルメチルフェノールは、非イオン性殺菌剤でありマイナスに帯電する口腔内細菌に作用させた場合、細菌の表面だけでなく内部まで浸透し強い殺菌効果が得られる。
勿論だが、口の中の汚れの除去には機械的な清掃が最も有効で、洗口液などの化学的な清掃はあくまで補助的である。洗口剤単独の使用を長期間行った場合、歯肉炎が悪化する可能性があると考察している。
全ての洗口剤において、舌苔付着、歯垢付着。歯肉炎、口腔内細菌数、各種統計学的に有意な差を認めなかった。舌苔や歯垢の除去には,ブラシ等を用いた物理的清掃が最も効果的であり、そこに化学的清掃を加えることによって効果がより増加する。実験期間中は歯磨きを禁止して洗口剤のみの使用を指示していたため、付着状態に有意な変化が見られなかった。診査項目である歯肉炎は、本研究における被験者に歯周病を有する者が皆無であり歯肉に目立った炎症が認められなかったため、GI値に有意な変化が見られなかった。しかし、洗口剤によっては単独の使用で歯垢付着率が増加したことから,長期間実験を継続した場合には歯肉炎が悪化すると予想される。口腔内の細菌数は、舌や口腔粘膜などの表面、歯垢の細菌叢を反映したものとなっており、特に舌苔や歯垢中の細菌数は顕著である。本研究では、洗口剤使用前後で舌苔付着,歯垢付着において有意差が認められなかったため、同様に口腔内細菌数も有意差が認められなかったと考えられる。しかし、洗口剤は物理的な口腔清掃を行った上で補助的に使用することで、舌苔や歯垢の付着が減少し、歯肉炎発症抑制,口腔内細菌数の減少につながる。
論文から言える事
以下の事が今回言えると思う。
1)イソプロピルメチルフェノールは殺菌作用があり、口臭を低下させる。
2)洗口しても口の中の細菌数や舌苔には変化がなく、機械的な除去が必要と考えられる。
3)洗口剤だけ使用して歯磨きしなければ、歯肉炎は悪化する可能性がある。
4)歯の漂白効果に関しては実験項目にないため判定は不能
noshにどれだけの濃度のイソプロピルメチルフェノールが含まれているかは私には分からないので、なんとも言えないが、とりあえず口臭には効くよ、と言うことだけは確かだと思う。
気付いた?
もう一度よく論文を見てみよう。
実は、イソプロピルメチルフェノールが含まれている今回実験した洗口剤はリステリンだった。
え??リステリン???
一番最初に調べたリステリンの成分表をみてみよう
イソプロピルメチルフェノールがしっかり入っていた。
濃度に差はある可能性があるが、リステリンでもnoshでも有効成分は同じと言うことが判明した。
リステリンの方が全然安いよね
また、それならリステリンで歯が白くならないとおかしい。
リステリンで歯がこんなに白くなるものだろうか。
長期的に使ってる人、是非教えて頂きたい。
まとめ
まあ、思った通りの展開だったわけだが、案外論破するのは難しい。
濃度や使用頻度、使用期間による効果の差というのは今回論破できていない。
論文1本だけで太刀打ちはなかなか厳しいということは理解しているが、忙しく英語論文を探す所までは今回は行き着かなかった。
Adsenceは最近こういった商品の広告が非常に多くなってきている。
最近のGoogleの審査がザル過ぎるのではないだろうか?
こういった洗口剤やホワイトニングに関して歯科医療関係者の方、またadsenceの広告出稿などに詳しいIT系の方のコメント、ご意見お待ちしています。
このブログを読んで薬機法的にこのサイトのどこが駄目なのかを解説したブログがありました。ご紹介しておきます。