(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集

日本語が不自由な歯科医師のろくでもないお話 

2020年歯科技工士国家試験の結果

 

 

 

COVID-19の影響で遅くなりました

3月の終わりに発表されたのだが、新型コロナウイルスの影響でこの話に手をつけるのが遅くなった。

さて、今年の技工士国家試験の結果としては以下の表を参照して頂きたい。

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技工士国家試験推移

ここ10年以上ずっと続いてきた受験者数と合格者数の減少が止まった。

 

しかし、これを素直に喜べるほど状況は甘くない。

2009年の合格者数を100とすると2020年では58.6しかない。

10年で4割以上人材輩出能力が減少しているのだ。

これは異常なペースだろう。

 

しかも基準となる2009年すら、それ以前からすると相当減っている。

平成の最初には毎年2500人以上歯科技工士が誕生していたと考えれば、その当時からすると今は1/3に過ぎないのである。

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各学校別の結果

技工士を養成する施設も廃校、学科の消滅等が相次いでいる。

私がデータを取り始めてから全国で52あった養成施設のうち7つが消えた、または消えることが決定した。

それはなぜかといえば、定員を大幅に下回る学生しか集まらないからである。

 

各学校別の結果を以下に示す。

これを見て頂くとわかるが、定員を充足している施設は殆ど無く、50%を切る施設がかなり多いことがわかる。

30%を下回る学校を青く塗ってある。

こういう状態が長く続けば当然やっていけるわけがない。

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中には前年の充足率20%台から90%程度に持ち直した、学生募集を頑張った施設もあるが、1施設の頑張りには限界があるだろう。

 

ここ1年で東北大学と石川県の専門学校の廃部、廃校が決まったが、それに対して2校の新設がきまった。石川と大分である。石川は廃校になったものを引き継ぐような形になるようだ。

しかし、これでは所詮プラマイ0であるし、もしこの2校がうまくいかなかったとしたら、もう新規に参入する所は本当にないのではないか、という危惧もある。

 

県に1つしかない所は多い。

他県に行ってまでわざわざ入学するというシチュエーションは考えづらい。

なんとか食い止めないとその県に対する技工士の供給は止まってしまう。

しかし、今後も次々と討ち死していく可能性は否定できない。

 

勿論、技工士の高齢化も大問題である。

50歳以上の技工士が約半数であり、20年後には技工士数は相当減っていると考えられるからである。

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 もうここまで来ると国策でなんとか、なんとかしてもらわないと!!というわけであるが・・・。

 

厚労省の検討会

このブログでも度々取り上げてきた厚労省の検討会はのべ8回の検討会を経て最終的な報告書が3月にアップされた。

歯科技工士の養成・確保に関する検討会|厚生労働省

 

報告書へのリンク

https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/000616585.pdf

 

2年近くやっていたわけだが、実は議事録は最初の3回しか公開されておらず、どういった内容が検討されたのかは一部しかわからないという残念な状況である。

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なので、とりあえず最終的な報告書の内容に目を通すしかない。

 

報告書

やりがいなのか、きつい職業なのか

私個人の考えだが、技工士が敬遠される理由はやりがいがない、とかそういう事ではなく、長時間労働と低収入である。

やりがいがなくても賃金が高ければ一定数は必ず働くと思う。

 

この報告書では、こういう風に書いてある。

 歯科技工士養成施設の状況
○ 近年、歯科技工士養成施設の入学者については、女性の割合は増加傾向にある一方で、総数は年々減少しており、 さらに養成施設の募集停止も相次いでいる。
入学者数が減少している一因として、若年者のう蝕の罹患率が減少し 、治療経験が少ない者が 増加したことにより 、 歯科医療に関わる職業 として歯科技工士の認知度が低下していることが考えられる 。
○ それだけではなく 、歯科技工士という職業に対して、 長時間労働や低賃金というイメージが(学生だけではなく、進路指導の教員も含めて)あり、歯科技工士養成養成施設は進路の選択肢の中で敬遠されるという意見もあげられた。
○ 歯科技工士養成施設の入学者を確保していくために、オープンキャンパス等の開催や、歯科技工所における小中学生の職場体験の受入開催や、日本歯科医師会のホームページに歯科技工士の職業紹介の動画を掲載する等、歯科技工士の認知度をあげるための取組みが行われている。

低賃金、長時間労働というのはあくまでイメージであり、実態はそうではない、と言わんばかりの大本営発表

かなり苦しい文章で折り合いをつけている感じだが、どうしても厚労省やそのバックにある財務省は低賃金による敬遠というのを認めたくないらしい。

 

また、歯科技工士の認知度、という話も出ているが、じゃあPTさんやSTさんだって特殊な病気で入院するぐらいじゃないと会わないでしょ?

 

また、技工士の離職・復職に関しての内容では以下の様な事が書いてある。

歯科技工士の離職・復職について

○ 厚生労働科学研究2の結果では、年齢階級別の就業の状況については、歯科衛生士はいわゆるM字カーブを示しており、20代~30代に離職した後も復職する傾向が見られるが、歯科技工士では右肩下がりであり、離職後に復職する者は少ない。

○ 同研究による歯科技工士の就業状況等に関する調査の結果では、現在、歯科技工士として就業していない者が歯科技工士としての仕事を辞めた理由として、「仕事内容への不安」と「給与・待遇面」が上位を占めていたことから、若い頃に給与・待遇面や仕事の内容等への不安があると、歯科技工士として働き続けることに不安をもち、結婚等のライフイベントを機に離職する者が多いと考えられる

○ また、歯科技工士の労働実態等に関する調査において、職務内容に対する意識について「社会の人々は、私の仕事を尊敬するに値する仕事だと思っている」「私は仕事をしていて着実な人生設計がたてられる」という質問に対しては、いずれも否定的な回答者の割合が半数を超えている、という結果が報告されている。給与・待遇等だけではなく、歯科医療に関わる職業としての実感を得にくいことや自分自身の仕事に対する評価が少ないこと等によって、仕事のやりがいを感じにくくなることも、離職につながっていると考えられる。

○ 離職防止のためには、職場環境や長時間労働などの労働環境や給与等の処遇に関する問題を改善する必要がある。そのためには、

歯科技工所の状況に応じた業務の効率化を図ること

短時間勤務の歯科技工士の雇用など、多様な勤務体系を取り入れていくこと

女性歯科技工士が増加していることから、産休育児休暇の取得や子育てのための勤務時間の調整等、女性が働きやすい環境を整えること

結婚等のライフイベントを機に離職するという解釈だが、これは本当に事実に即しているのだろうか?こんな結論を信じろというのか?

そしてあくまでやりがいがあれば離職しないし、復職してくるとのゴリ押し。

さらに給与等の処遇に関する問題を改善する必要、と書きながら、業務を効率化しろ!女性が働きやすい職場!とか給与自体を上げる気は0ですよ!という意思を強く感じる文章になっている。

 

今後の方向性?

今後の方向性に関する文章も認められる。

2年卒業後に研修期間を作るという案。研修期間は国から給料が補助されて研修期間を終わってからより給料が高い、とかそういう事にならないといいね・・・。

現在の2年制課程では十分に修得することが難しい、より臨床的な内容については、2年制課程卒業後に国家試験受験資格を与え、国家試験合格後に臨床研修のような制度や歯科技工士として働きながら学ぶことができる研修制度などの環境整備を行うことを検討してもよいのではないか、との意見があげられた。

 

 研修目的で留学生をこき使う戦法を技工士にも持って来ようという案も出ている。

歯科技工士養成施設への海外からの留学生が増加しているが、歯科技工士国家試験の受験資格はあるが、国家試験に合格しても歯科技工士として就労するための在留資格がないため、日本で歯科技工士として就労できない状況となっていることから、海外からの留学生で歯科技工士国家試験に合格した者についても歯科技工士として就労可能となるようにするべきである。ただし、その場合にあっても、研修目的に限定すべきである。

 

テレワークについてデジタル化が進行している以上、対応は不可避であり、早く法整備しなければならない。

○ デジタル技術を活用した歯科技工を行う場合について、CADはPC上の作業のみとなることから、歯科技工の過程においてCADを行う際にテレワークを活用する場合の取扱いが不明確であるため、その取扱いを整理する。

○ チェアサイド等における歯科医師と歯科技工士の連携を推進する観点から、

シェードテイキング等、現行法令において歯科技工士が実施可能な業務内容

訪問歯科診療において歯科医師に歯科技工士が帯同する場合の業務のあり方及び歯科技工を行う場所の考え方

について、整理する。

結局の所、無い袖は振れない、保険点数を上げることはできないから給料を上げるとは口が裂けてもいえないので業務を効率化とかやりがいとか安価な外国人労働力とかそういう話しかできないのである。

厚労省おかかえの検討会で真っ向から対立することも出来ないわけで期待はしていなかったが、まあそういうことだ。

 

現実的には不可能な事だが、いっそのこと保険から金銀パラジウム合金を外して銀合金とCADCAMだけにすれば、非常に高価になってしまった金銀パラジウム合金に対する保険の支払いがなくなるわけでそれでういた税金の一部を技工士の育成や待遇向上に役に立てたりできないのかな?と思った。

まあ色々な所から反発が出て無理だろうけど、それぐらい劇的な改変がなければまたいつのように報告書を出しただけの体裁作りなだけではないだろうか。

 

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