厚労省から最新データが発表
2年に1度、医師、歯科医師、薬剤師は自分がどこに現在いるか報告する義務がある。2018年がその年で今回厚労省から結果が発表された。
歯科医師に関する結果はこちらになる。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/dl/kekka-2.pdf
この結果に関して私の見解を聞きたい、という要望を頂いたのでちょっと考えてみた。
結果をみてみる
PDF内にある平成30年と平成28年の歯科医師数の結果を示す。
平成28年から平成30年までの2年間に歯科医師総数は101551人から101777人になった。
総数はたった226名しか増加していない。
20代~50代は全て減少で、60、70代のみが増加
60代以上の割合は31%である。
日本の65歳以上の割合である高齢化率は28%ぐらいなんで、ある意味日本の人口階層通りといえばそう。
しかし、40代は歯学部の定員削減による、30代以下の層は歯科医師過剰のネガキャンによる国家試験合格者数削減の影響を被っており、国の施策として強制的に減らされている。
当面増加する見込みはないと言ってよいだろう。
たった2回の調査結果では傾向がわからないので、ここ10年ぐらいの変化を一気にみてみたいと思う。
12年間の結果
平成18年から30年までの歯科医師数の推移を示す。
これだとちょっと分かりづらいので、男女の数字をなくして簡略化してみる。
総数の推移を図にしてみる。
平成18年から7000人ほど増えているが、その増加スピードはどんどん鈍化しており、ほぼプラトーといって差し支えないレベルである。
年齢階層別の結果
もう1度表を示す
平成18年と平成30年を比較してみると
60代が8499人→21738と大幅に増加
20代~40代は数千人単位で減少
50代は微増
70代は3000人も増えている。
しかし、図をみると50代も減少に入っており、今後50代も減少傾向が強まると予想される。
また、60代の増加傾向も平成28→平成30の段階で鈍化した。
この推移をみると、おそらく日本の歯科医師数は今が最も多く、今後減少していくと考えられる。
2020年の調査はプラマイ0、またはマイナスに転じる可能性もあるのではないだろうか。
まあ遅かれ早かれここ数年で減り始めるだろう。
どちらにしてもついに歴史的転換点を迎えようとしている
10年後は
10年後、今の60代、70代の多くが後期高齢者になっていくと引退が相次ぐことが予想される。
おそらく年齢階層で最も高いのは50代の減少により60代となるだろう。
その60代もその10年後には引退していく。
これからすると国家試験の合格者数が今のままならここ20年で歯科医師数はある程度減ると予想される。
では、歯科医師の過剰が解消されて収入があがるか、と言われるとそれはわからない。
日本の高齢化はまだ20年後も進行しており、当然日本の人口自体もシュリンクしていく。人口の減少にまだ歯科医師の減少ペースが追いついていない、という可能性もありえる。
そうなると大学を廃止するしないという話になるかもしれない。
疾病構造の変化や歯科の置かれる環境も変化している可能性がある。
田舎では外来で患者を待っているだけでは患者が来ない可能性もあるし、そんなことはなってみないと私だってわからない。
日本自体が沈没していくと考えると高額の保険外診療も増えるかはわからない。
すでに国家財政の相当な割合は医療費であり、これからさらに高齢者が増えていくとすると歯科における皆保険はすでに維持されていないかもしれない。
保険外になればウハウハ?ダンピング合戦で疲弊しているかもしれないし、高ければ患者が来ないかもしれない。
単純に歯科医師が減ればなんとかなるだろう、というのは経済成長が常に右上がりであることが前提であると思う。
もうそういう時代ではないことはロスジェネ以下の世代はみんな知っているし、むしろ右肩下がりしか知らないのである。
勿論だが、歯科医師国家試験の合格者数が毎年3000人で今も歯科医師数が増え続ける状況よりは合格者2000人で維持して歯科医師数が増えないように抑制せざるを得ない状況は仕方無いとは思う。
同じ様な業態の歯科医院が多すぎる。
傲慢に思われるかもしれないが、私は経済成長やバブルに踊り歯科としての職域や保険適応をうまく拡げられず、競争が厳しくなったら泣きついた先輩達、施策が後手後手の厚労省、漫然と定員削減をかわし続ける私立大学の功罪を考えずに、新規参入しようとする若手を国家試験で規制することを正当化することはできないと思うのである。
参考資料
2019年国家試験の結果