(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集

日本語が不自由な歯科医師のろくでもないお話 

ドックベストセメントって本当に効果があるの?

最初に

令和になって2回目の更新。

このブログ、17000字以上あるので、コーヒーでも飲みながらじっくり読んでいただければと思う。

検索してくる一般の方もいると思う。

内容はある程度専門性が高い内容となっているので、全てを理解することは難しいかもしれないが、頑張って読んで頂ければと思う。

私自身もはじめて調べる内容だったため、完璧に検索できたかはわからないので、色々な人の知恵を拝借できればいいのかなと思う。

 

ドックベストセメントとは

私は使ったことがないので、どういう物か実は知らない。

しかし、実際使っている歯科医師はある程度の数はいるようだ。

そして、テレビでもたまに取り上げられる。

 

ドックベストセメントをGoogleやyoutubeで検索するとわんさか出てくる。

上位にあったもののリンクを貼っておく。

上はドックベストセメントの大家みたいな先生がテレビで紹介されたもの

下は色々効果を説明しているものとなる。

youtu.be


またネットを検索してもわんさか出てくる。

https://www.masakishika.jp/saishin/

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ドッグベストセメントとは

 

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ドックベストセメントの利点

 

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https://www.youtube.com/watch?v=22dfAwLM7aE&t=48s

 

ドックベストセメントは日本の薬事を通っていないため、使用に関しては患者に対して充分な説明と了承が必要である。

そして保険外診療となる。

また、医療広告ガイドラインに基づき、薬事未承認の製品を医院で使用している事をネットで紹介する場合には、入手ルート、安全性に関する表記が必要だが、実際そういった表記を正確にしている医院をみたことがない。

 

薬事未承認に関する医療広告ガイドラインは以下を参照

  

色々まとめてみると

ドックベストセメントは

虫歯を削らないで詰めれば半年~1年で虫歯がなくなる

銅と鉄イオンによる効果

アレルギー反応の心配が無い

殺菌効果が半永久的に続く

などと謳われている材料のようだ。

 

テレビで紹介されるたびに

当院では行ってないのか?

と患者さんに聞かれ

行っていない、と言うと

時代遅れ・・・・

という顔を患者さんにされる事がある。

 

本当に効果がありそうなら使ってみたいと思うが、自分は慎重なタイプである。

特に日本での薬事未承認であるなら尚更である。

効果が論文ベースで実証されている位は調べてみないと導入する気にはならない。

ということで色々調べてみることにした。

 

とりあえず検索して見よう 

ドッグベストセメント(Doc's best cement)

をググるとWikiが出てくる

ドックベストセメント - Wikipedia

ドックズベストセメント(Doc's Best Cement)とは、アメリカ合衆国テキサス州<ヒューストンに本社を置くCooley & Cooley社から発売されている歯科医療のう蝕治療で用いられるセメントの事、またそれを用いた治療法の事。銅の殺菌力により、従来であれば抜髄(神経をとる治療)になる症例で、神経を残すことができると期待される治療法であるヒールオゾンと同様にミニマムインターベーションをコンセプトとする治療法である。2011年現在、日本では薬事法の認可を受けていない。

従来の治療法では歯髄まで感染したう蝕は暫間的間接覆髄法や直接覆髄法で対応できる限られたケース以外は原則的に抜髄となっていた。ドックズベストセメント法は感染歯質をすべて除去すると露髄する場合、感染歯質を残し薬効低下がなく半永久的に薬効が続くドックズベストセメントを置くことにより歯質内の病巣を無菌化し、軟化象牙質を硬化させ、歯髄を残し、治療を終了する治療法である。
in vitroでの実験では、アメリカモンタナ州立大学のsturmanとcostertonは2005年、滞留培養液におけるバイオフィルム形成のテストを行った結果、ドックズベストセメントを用いたものはバイオフィルム形成は見られなかったと報告している安全性に関してはローマリンダ大学Li.Y、Zhang.W、Onyango.Oが2005年細胞毒素は認められないことを報告している。

ここある引用の全てが Dental Diamond 2009年5号からであり、入手できるかとみてみたが、すでにバックナンバーもなかった。

 

さらに検索するとおそらくDental Diamondから文章をそのまま持ってきた感じのサイトを発見。

https://www.fmdc.jp/colum/colum70.html

Doc's Best Cements(ドックズベストセメント)の原型は19世紀後半フィラデルフィアのDr.John Henry Holiday(通称 ドック・ホリディー)が抗菌力とミネラル分が豊富で、深い虫歯から歯髄(歯の神経)を守り、虫歯の再発を起こさせないセメントとして作製されました。その後、抗菌力を増加するために初期の処方からかけ離れたものに改良したために虫歯の再発防止力や歯髄保護効果が失われてしまい、使われないセメントになってしまったのです。
 1990年代に入りDr.Timothy Fraserが薬剤師とともに研究を重ね、抗菌性に優れ人体に無毒なセメントとして前述のドック・ホリディーのセメントを改良開発し、テキサス州のCooley&Cooley社と最終調整を行いました。そして、ドック・ホリディーにちなみ 「Doc's Best」 と命名し製品化されることになったのです。

 

 

さらに検索してみた。

アメリカの通販のサイトに行き着いた。

Doc's Best Copper Cement という名称が正しいのかな?

https://www.darbydental.com/categories/Cements/Permanent/Doc%27s-Best-Copper-Cement/8483000

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ドックベストセメント

Manufacturerが Cooley & Cooley社ではなく、Temrexになっている。うーん、どこが発売しているの???

また簡単な説明に

Doc's best copper cement is an antimicrobial permanent cement that retards decay.This Formula is recommended  for use under anterior composite restorarions.

ドックベストセメントはう蝕の進行を遅くする永久的な抗菌的な作用をするセメントである。使用法としては前歯部のコンポジット修復の裏装として使用するのが望ましい。

と書いてある、よね?よね?

ここに行き着くまでにYoutubeとかで大臼歯の大きな虫歯症例に突っ込んだりしているのを見たが、そのような使用法はこの短文からは推奨されているようには思えなかった。

 

Pubmedで検索

Doc's best cement

でPubmedで検索すると引っかかってくるのは1件しか無かった・・・。

Thneibat A,Moore BK,Matis BA,Anticariogenic and antibacterial properties of a copper varnish using an in vitro microbial caries model.Oper Dent 142-148,2008.

えええええええ??

他にもちょっと変えて検索したがひっかからない。

 

Wikiに書いてある2005年の研究は???

ということでWikiに書いてある人名を手当たり次第でPubmedで検索して見ることにした。

 

Sturman montanaで検索

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sturman montana

検索したが、2005年付近の論文がない。

 

Costeron 2005 montanaで検索すると4件。

確かにこのCosteronという方は当時モンタナ州立大学に居た事がわかる。

そしてバイオフィルムの研究をしている。

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Costeron 2005 montana

 Costeron montanaで検索すると38件ヒットするがそれっぽいのはない

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Costeron montana

Doc's best cement で全体で一件しかヒットしないので

Zhang copper cement で検索

すると2009年より最近しかない。

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Zhang copper cement

Dental Diamondの文章を読んでいないのだが、根拠になる引用元がいかんせんはっきりしない。

Fraser Tでも検索してみたが、Pubmedではドックベストセメントに類似した材料の研究を見つけることは出来なかった。

PubmedでWikiに根拠として掲載されている論文を発見することは私にはできなかった。

ということは、1件しかヒットしなかった論文に効果が半永久とかそういう結果がかいてあるのか?

それとも自分が見つけられなかっただけなのか?

 

効果に関してサイトに記載されている先生は論文を持っているかもしれない。

お持ちの方、またご存じの方、是非メールで送って頂きたい。

 

 

1件しかヒットしなかった論文を読んでみる

とりあえず、現状残された根拠はヒットした文献1本しかない。

ヒットした論文は全文がダウンロード可能だったので読んでみた。

この論文の引用に期待したい所であるが、まず内容である。

Thneibat A,Moore BK,Matis BA,Anticariogenic and antibacterial properties of a copper varnish using an in vitro microbial caries model.Oper Dent 142-148,2008.

一応、簡単な訳をつけたけど間違っていたらゴメンネ。

 

abstract

The antimicrobial and anticariogenic properties of a copper varnish (experimental mixture of Doc’s Best Red Copper cement and Copalite varnish,Cooley and Cooley, Ltd, Houston, TX, USA:designated in this study as “Copper Seal”) on the root surface were evaluated in an in vitro microbial caries model. Fifty-six human root specimens were prepared from anterior teeth and randomly divided into four groups: Groups 1 and 3—
Copper Seal; Group 2—chlorhexidine varnish, the positive control (Cervitec, Ivolcar Vivadent, Schaan, Liechtenstein) and Group 4—a negative control that received no treatment. The varnishes were painted in Groups 1, 2 and 3, then visually removed after 24 hours in Group 1. The specimens were demineralized in a microbial caries model for five days. Plaque was collected from the specimens to obtain bacterial colonization numbers, then the specimens were sectioned and analyzed for lesion extent using Confocal Laser Scanning microscopy. There were no significant differences (p>0.05) among the four groups in terms of bacterial count. Regarding caries lesion
development, the group with copper varnish visually removed (Group 1) and the non-treated group (Group 4) had significantly greater total area caries lesions and total lesion fluorescence than the copper varnish without removal group (Group 3) and the chlorhexidine group (Group 2). Therefore, it was concluded that copper and
chlorhexidine varnishes have anticariogenic effects on root surfaces, as tested in this model.

 

 in vitroでのカリエスモデルを使用してドックベストセメントの歯根面での抗菌、抗カリエスについて評価した。
56名の人の前歯を用いた。
グループ1と3がDoc’s Best Red Copper cement and Copalite varnish→通称カッパーシール
グループ1は24時間後にカッパーシールを除去
グループ2がクロルヘキシジンバーニッシュ
グループ4は無処置(コントロール)
5日間脱灰処理
グループ1~4で今回用いた細菌の数は有意差がなかった。
グループ1と4のカリエス領域は2,3よりも有意に大きい
今回の様な実験系ではカッパーシールとクロルヘキシジンバーニッシュ群は歯根において抗カリエス効果がある。

 

Introducionの一部

Copper ions have been reported to have an antibacterial effect both in vitro6-11 and in vivo.12 Copper reduces the number of bacteria on tooth surfaces. The suggested
mode of the action of copper is the limitation of bacterial growth and the inhibition of glycolysis, leading to a decrease in acid production.13-14 Copper has also been
found to interfere with glucan formation by glucosyl transferase. Such a process may contribute to reduced plaque accumulation.15 

Foley and others16-17 suggested the use of copper cement as a liner under a less soluble material to take advantage of copper cement’s cariostatic properties. Afseth and others18 found a reduction in caries development in rats after adding 65 ppm copper in the drinking water. Rosalen and others13 found that copper,which was co-crystallized with sucrose was an effective cariostatic agent in rats.
In another in vivo study, Foley and Blackwell12 compared the effect of copper cement with glass ionomer cement (GIC) on carious dentin that remained under restorations. These authors sampled the dentin microbiologically at one and six months and found that copper cement demonstrated a significant effect on the total anaerobic bacterial count over one month. Over six months, copper cement caused a significantly greater reduction in mutans streptococci than GIC.

銅イオンは歯表面の細菌数減少に役立つ。細菌増殖を限局化し、解糖系を抑制することにより酸産生減少に導く。プラークの集積減少にも貢献することが示唆されている。

不溶性の材料の下にカッパーセメントを裏装するとセメントの抗カリエス的な効果を期待できる事が示唆された。ラットにおける実験でも銅イオン含有の水を飲むことによりカリエス成熟が抑えられた 

カリエスに罹患している象牙質を残したままカッパーセメントまたはグラスアイオノマーで修復した場合の比較において、6か月を越えてもカッパーセメントの方がグラスアイオノマーよりもミュータンス菌への抗菌性を有している事が示唆された。

 

Cooley and Cooley (Houston, TX, USA), the manufacturer of copper cement (Doc’s Best Red Copper cement) and copalite varnish, have recently proposed mixing copper cement powder with copalite varnish (Copper Seal) to serve as an antibacterial varnish to be painted on tooth surfaces. This preparation could have many potential uses, especially considering that there is no approved antibacterial varnish currently on the US market. The topical application of an antibacterial agent may have the potential of decreasing the severity of existing root caries lesions or preventing the development of new lesions.

ドッグベストセメントとコパライトバーニッシュは、ミキシングして歯の表面に塗ることにより抗菌的なバーニッシュとして機能する。現在アメリカにおいて承認されているバーニッシュがないという事から、色々と潜在的な使い方をされてきた。この材料は根面のカリエスの重症度を下げ、新しい部位にカリエスが出来るのを防いでくれる可能性がある。

 

Material and Methodsの一部

The teeth were required to have apical closure and root surface areas without any visible damage or  demineralization.

An acid resistant varnish (red fluoride-free nail varnish) was applied, leaving an approximate 4 mm x 4 mm window on the buccal root surface (about 2 mm apical to the
CEJ).

試料は元々カリエスがないCEJより根尖側2mm程度の頬側歯根部4×4mm部

 

Result+Discussionの一部

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result

Copper varnish is still new, and the manufacturer has not specified how many pplications are needed for this particular use. In the current study, only one application was used. Also, the amount of copper released was not specified by the manufacturer. It is possible that the amount released was not sufficient to demonstrate a prolonged antibacterial effect after five days.

Duguid7 measured the bacterial inhibition effect of different copper concentrations and found that 10-3 M copper inhibited the rate of growth, whereas 10-4 M and lower concentrations had little or no effect. In a more recent study, Foley and Blackwell10 measured the amount of copper released from copper cements at 2, 7 and 28 days and at six months and found that the highest amount was released after two days, with the
majority of the decrease measured at day seven. Thus, it is possible that the varnish had an initial effect on S mutans numbers, but the effect was lost after longer incubation. A similar explanation may apply to the CHX varnish.

In 1996, Van Loveren and others21 compared the effect of different CHX varnishes in a bacterial demineralization model and found CHX to be antibacterial and, in their experiment, the varnishes were applied adjacent to the specimens. The experiment extended over three serial 22-hour demineralization periods with fresh S mutans suspensions used for each period. The bacterial count in their study was higher in the
second and the third applications of the bacterial suspension when compared to the first 22 hours. Therefore, it is possible that both CHX and copper varnishes did have an antibacterial effect at the early stages of the experiment, but that the measurable
effect was lost after five days. In the current study,although most of the copper varnish was still at the tooth surface after completing the experiment, the active ingredient could have been released. This is in agreement with Foley and others.17,28

詳しくは訳さないが、5日間の脱灰ではクロルヘキシジンバーニッシュとカッパーシールでは差がでなかったけど、他の文献の結果などからするとカッパーの方が長持ちするんじゃないかと書いているようだ。ただし、ドッグベストセメントはどこら辺が適正濃度なのか業者による指定がない(論文当時で今はあるのかは不明)。

 

Conclusions

Chlorhexidine and copper varnishes have anticariogenic effects on root surfaces. However, based on the results of the current study, it was unclear whether the effect was due to the release of antibacterial agents and/or to the mechanical coverage of tooth structure. As long as the varnish stayed on the surface, caries development was slowed down. The application regimen and long-term caries effects of a copper varnish need further investigation before clinical protocols can be recommended.

クロルヘキシジンバーニッシュとカッパーシールは歯根表面の抗カリエス効果を持っている。しかし、今回の結果からすると抗菌的な何かを放出することによるものなのか、単に表面を被覆したからなのかがよく分からなかった。バーニッシュが歯根表面に残る限りカリエスの進行は遅延する。カッパーバーニッシュの構成と長期間のカリエスに対する効果の今後の検証が臨床的なプロトコルの前に必要だ。

 

何がわかったか

結局の所、ネットに記載のある 

虫歯を削らないで詰めれば半年~1年で虫歯がなくなる

銅と鉄イオン?による効果

アレルギー反応の心配が無い

効果が半永久的に続く

という中で、

銅イオンがある程度抗菌的に働くらしい

ということだけわかった。

しかし短期間ならクロルヘキシジンバーニッシュの方が優秀みたいだ・・・。

逆に言うとここまで調べてこれしかわからない。

 

リファレンスにあった長期間やったという文献をみてみる

Foley J & Blackwell A (2003) In vivo cariostatic effect of black copper cement on carious dentine Caries Research 37(4) 254-260.

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リファレンス12

残念だが全文を入手できずアブストだけだ。

This study compared the effect of a copper phosphate cement (BCC) and a conventional glass ionomer cement (GIC) on carious dentine that remains under restorations in vivo. Using a split-mouth design, 45 primary molar pairs with dentine caries were sampled microbiologically. Without further removal of carious dentine, the molar pairs were randomly allocated to three restorative groups: (1) one cavity was lined with BCC and restored with GIC and the other was kept under review as an untreated control; (2) one cavity was restored with GIC, whilst the other was kept under review; (3) one cavity was lined with BCC and restored with GIC, whilst the other was filled with GIC. The dentine was re-sampled microbiologically at 1 month (30 pairs) and 6 months (15 pairs). BCC demonstrated a significant effect on the total anaerobic count over 1 month, when paired with both the control and GIC, whereas the antibacterial effects of GIC compared with no treatment were not statistically significant. In addition, BCC performed significantly better than no treatment in reducing mutans streptococci and lactobacilli over 1 month. Over 6 months, BCC caused a significantly greater reduction in mutans streptococci than GIC. In conclusion, BCC demonstrated a significant antibacterial effect on carious dentine in vivo.

象牙質う蝕のある乳臼歯45ペアを虫歯を除去せずにランダムに3つのグループに振り分けた。

グループ1 

片方をcopper phosphate cement (BCC)で裏装後glass ionomer cement (GIC) で修復

もう片方は何もしない

グループ2

片方をGICで修復

片方は何もしない

グループ3

片方をcopper phosphate cement (BCC)で裏装後glass ionomer cement (GIC) で修復

片方をGICのみで修復

1か月後と6か月後の象牙質の状態を比較

BCCを裏装したものは、GICで修復したもの、何もしなかったものよりも有意に象牙質内の細菌数の減少が認められた。1か月後ではmutans streptococci とlactobacilli数が減少。6か月後ではBCCによる裏装を行った象牙質においてはGICによる修復のみを行ったものよりもmutans streptococciの大幅な減少が認められた。

しかしこれはドックベストセメントではないようだ。

これを書いた後で論文を入手して確認したところ、

PD Black Copper Cement® (BCC, PD, Vevey,Switzerland; powder:liquid ratio 1:2 w/v)を使用しており、やはりこれはドッグベストセメントではない。

つまり、ドックベストセメントに関するパブリッシュされた論文はほとんどないのではないだろうか?

 

結局のところ

ドックベストセメントは

虫歯を削らないで詰めれば半年~1年で虫歯がなくなる

銅と鉄イオン?による効果

アレルギー反応の心配が無い

殺菌効果が半永久的に続く

という説明が多くの歯科医院のサイトでされているわけだが、

 

銅イオンの働きとして

ある程度抗菌的に働くらしい

効果は半年はあるらしい

ちゃんとやると虫歯になった象牙質中の虫歯の原因菌がかなり減るらしい

ということだけはどうも論文的にも確からしいということはわかった。

 

アレルギーがないと言い張っているが、

銅に対してアレルギーがある人にこれを使うとどうなるんだろうね。

大体今どきアレルギーリスク0なんていう物質があるだろうか?

 

大きな疑問もある

象牙質中の細菌がかなり減ったと虫歯がなくなったは同義ではないんじゃないか、ということである。

銅イオン(または謎の鉄イオン?)の効果により象牙質の再石灰化が期待できるとは論文のどこにも書いていない。

進行を遅らせるとか抗菌作用があるぞ!とかは書いてあるが。

つまり、細菌は減るかもしれないがそこは軟化象牙質(虫歯で柔らかくなった所)のままなんじゃないか?疑惑がでてくる。

そしてそこに二次象牙質の誘導がないのであれば、

しっかり虫歯を除去して露髄すればMTAまたは水酸化カルシウム

間接覆髄で水酸化カルシウム

などの方法がよほどエビデンスとコンセンサスがあるのではないだろうか?

 

下の説明をみていると、永続的な殺菌効果があるからってこのままクラウンいれるってことなのかね?

https://www.masakishika.jp/saishin/

この図だと虫歯が大量に残っている感じにしか見えないのだが・・・・

リエントリーは逆に許されない感じなんだろうか?

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このまま?

どちらにしても効果が半永久とか書いているなら、それを実証する論文を提示してもらいたいと思う。何を持って半永久としているかは今の所闇である。

それを熟読させていただく。

Pubmedで唯一ひっかかるドックベストセメントの論文は5日間だけの研究?それでなんで半永久といえるのか?もっとすごい論文があるはずなんですよね?

 

また、それほど優れた方法であるなら、

なぜ日本の商業誌ではDental Diamond 2009年5号以外にググっても出てこないのか?

また、最初の頃に書いたが

ドックベストセメントはう蝕の進行を遅くする抗菌的な作用をするセメントである。使用法としては前歯部のコンポジット修復の裏装として使用するのが望ましい。

というアメリカの某サイトのいうことが使用方法として業者の推奨であるなら、今の日本で行われている大臼歯の象牙質にドーンは使用方法として推奨されていない方法の可能性がある。

 

調べれば調べるほど、個人的にお勧めすることはできなくなった。

 

逆に言えば浅いとはいえ自分で調べたので、患者に対して今までよりは強くいうことができるかもしれない。

「あの材料で本当に虫歯がなくなるかは科学的にまだ実証されていないみたいです」

 と。

 

まだ問題が 

もう一度これをみてみよう。

私はこれをみてすぐにおかしいと思った。

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まず疑問に思ったのは、アメリカでは薬事等を承認しているのはFDAであり、ADAではないはずだ。

大体アメリカの歯科医師会が薬を承認する権限を持っているはずがない。

日本の歯科医師会が薬を承認するようなものだ。あり得るわけがない。

 

別の歯科医院のサイトを調べるとFDAと書いてある。

http://www.kawade-dental.com/other/

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FDA

ADAと書いてる時点でそのサイトの歯科医院は虚偽記載ではないだろうか?

しかし、後述するがADAって書いてるサイト滅茶苦茶多いからね。

 

FDAのサイトに行ってみて検索してみた。

Doc's best で検索したら怒られたので

Docs best

Docs best copper cement

などいろいろな検索キーワードをぶっこんでみた。

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FDA検索結果

えーと、出てこないですが・・・。

 

例えば3MのレジンブロックであるLAVA ultimate などを検索すると

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LAVA

ちゃんと登録されている。

 

どういうことなのだろうか?

強引に Doc's best red copper cement  FDA

でググったところ以下のPDFファイルが出てきた。

https://www.accessdata.fda.gov/cdrh_docs/pdf3/K031494.pdf

Doc's best  white cementに関してCooley & Cooley社がFDAに申請した書類とその結果のようで、確かに510(K)で番号をもらっている。

え?RedじゃなくてWhite???

 

510Kとは

510(k)は、安全性と有効性において合法的に流通している他の機器との「実質的な同等性」を示すことで販売認可を得るためにFDAに提出される市販前申請である。

http://www.medtecjapan.com/ja/news/2017/07/24/1956

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Doc's best white copper cement

FDAの510(K)というところに申請して番号をもらっているようだ。

510(K)の方で調べてみると確かにWhiteセメントはあった

K031494という番号が510(K)のナンバーとなる。

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510(K)

しかしRedに関しては510(K)においても番号を確認できなかった。

またWhtiteにしても用途申請の上位が普通の合着材料(被せ物を歯につける材料)であり、用途として裏層(削った歯の上に載せる?)がでてくるのは一番最後の方である。

そしてWhiteに関してはPubmed上で1本も論文をみつけられていない・・・。

 

日本の歯科医師が使っているのはWhiteなのかRedなのか?

Youtubeの動画をみているとこれが白くはみえないのだが・・・いや、硬化すると白い?

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実際ネットでドックベストセメントの画像をあさってみた

vol.68 ドックスベストセメント(Doc's Best Cements)|お知らせ|舩坂歯科医院|静岡県浜松市中区 自由診療専門歯科医院

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これコパライトもうつっているので明らかにREDだよね

 

しかし別のサイトでは

ドックスベストセメント - 名古屋市中川区やまぐち歯科

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明らかに白を使っているような画像なのだ。

 

あのー、Whiteなんですか?Redなんですか?

どちらでもいいんですか?

 

 

アメリカの認可を受けていると明言されているサイトの歯科医院様

お使いのドックベストセメントがREDなら

FDA承認ナンバーを教えていただければ幸いです

その番号でFDA照会してみたいと思います。

ここまで来たら折角なのでチェックして確認したいと思います。

 

 

 

ADAと記載している歯科医院はADAの承認ナンバーをぜひご教示お願いします

ドッグベストセメント ADA

でググると48000件ヒットするから、相当多くの歯科医院のサイト上に

ドッグベストセメントがADAの承認を受けている

という記述があるんでしょうね。

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510(K)は最近緩和されて510(K)における番号がなくても販売できるようになったものが結構あるらしい。

しかし、認可を受けているとサイトに書いている以上、そう明記しているサイトの先生方はサイトに510(K)またはFDA薬事の番号を示すことができるはずですよね?

米FDA、510(k)要件から1,000以上の機器を除外 | 医療機器の製造・開発 展示会・セミナー Medtec Japan |東京ビッグサイト

 

一応念のためにアメリカ在住のアメリカ人のDentistにも調べて貰ったがわからなかった。

そして、この材料に関して知っているか?と聞いたら

I don't Know

で終わってしまった・・・・。

いまのところn=3

 


結論

17000字以上にお付き合いいただきありがとうとしか言いようがない。

 

自分として以下の結論に至った。

論文的な根拠が私にとって大事なので、こういう結論になった。

しかし、これは文献が1本しかない状況からの結論なので、今後強力な文献をドックベストセメントを推奨する先生からご紹介いただければ考えも変わるかもしれない。

 

含まれる銅イオンが虫歯菌に対して抗菌効果を発揮する。

鉄イオンの効果を裏付ける論文がない。

虫歯がなくなることに関して裏付ける論文がない。

アレルギーがない、半永久的な効果、などを裏付ける論文がない。

二次象牙質が誘導されるかわからない。

虫歯を半永久的に置いておける確証がない。

他に根拠がもっとしっかりしている治療法があるので、無理にこの治療を選択する理由がない。

 

専門外の事を浅く調べておりますので最新の論文までしっかりフォローできていない可能性があります。

最新の知見をお持ちの先生がいらっしゃれば是非コメント等でご教示いただけますと幸いです。特にドックベストセメント(おそらくRED)に関するパブリッシュされた英語論文を探しております。

なお、全く論文をご提示頂けない場合、この結論をそのまま確定させて頂き、ドックベストセメントに関してそういうものだと認識させていただきますのでよろしくお願い申し上げます。

すぐにエビデンスレベルの高い論文を紹介頂けるはずなので、杞憂に終わるはずですよね?

 

付録

ドックベストセメントで検索すると100万件もヒットする

かなりの歯科医院で使用している証拠ではないだろうか?

そういった歯科医院は患者にどのように説明して使用しているのだろうか?

なかにはドックベストセメント否定の歯科医院もまれにあるが・・・。

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