(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集

日本語が不自由な歯科医師のろくでもないお話 

フェイクニュースにご注意

 

 

 

2週間程前

つい2週間程前にTwitterの歯クラ上で以下のサイトが話題になった。

nazology.net

証拠保全のため、一応、全文をスクショした。

正直実際に完成したら凄い材料だと思う。

 

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実際引用された論文を読んでみた

Translation Approach for Dentine Regeneration Using GSK-3 Antagonists.

Translation Approach for Dentine Regeneration Using GSK-3 Antagonists. - PubMed - NCBI

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アブストを読んでみるとこの実験は基本的にマウスを用いて行われており、人間に使った臨床試験などとは一切記載がない。
 
仕方がないので原著を入手して読んでみた。

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一応、原著を手に入れたよ、という証拠。
 
で早速実験方法をみてみたが、

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やはり動物実験であり、人間をつかった臨床試験には一切触れていない。
 
Discussionで今回のラットの露髄面積は人においてかなり小さい露髄面に相当する、的な所はあるが、やはり人では実験をしていない。
 
というわけでこの記事は完全なフェイクである
 

ふと見つけた引用

この記事に一番最後にreferenceを見つけた。参考にしたサイトがあったということなので確認にいった。

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一番最初のリンク先がビンゴだった。
また、2番目のリンクも少し関係あると思われる。
 

英文と和訳を比較すべし

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これをみると
In an effort to continue testing the drug's viability on patients, over the past five years, the KCL team has been looking into whether enough volume of dentine could be produced to repair cavities in human teeth.
という一節がある。
「この薬の実際の患者への実効可能性を検討するために、5年以上の間、KCLのチームは人の歯の窩洞を修復するだけのボリュームの象牙質を産生できるかどうかを調査してきた。」
と私は解釈したが、ナゾロジーでは

KCLの研究チームは、過去5年にわたる人への臨床試験の中で、チデグルシブが虫歯を修復するのに十分な量の象牙質を再生できるかどうかをテストしてきました。

と訳しており、これは完全にviabilityを誤訳しているのではないだろうか。

いきなり人の臨床試験やったことになっているが、この英文から私はそのような解釈は一切できなかった。

 

またその次に続く文章

They've further looked into the drug's range and safety, and if the mineral composition of the reparative dentin is similar to that which we produce naturally as humans, and whether or not it's strong enough to maintain the strength of the tooth. 

Professor Paul Sharpe, lead author of this research and Dickinson Professor of Craniofacial Biology at KCL, and his team have discovered that their study does indeed show further positive evidence that the method could be used in clinical practice. 

を訳したものが

また、チデグルシブの適用可能範囲や安全性、さらには再生された象牙質が、自然に生成されるものと似ているかどうかも綿密に調べています。

その結果、「患者への実用化は十分に可能」と判断されました。

研究主任のポール・シャープ氏は「チデグルシブによる治療は非常にシンプルで簡単なものであり、コストの削減も期待できる」と話します。

であるが、

その結果、「患者への実用化は十分に可能」と判断されました。

という文章は英文には見つからない。

 

追記

KCL原文最後の

In the last few years we showed that we can stimulate natural tooth repair by activating resident tooth stem cells. This approach is simple and cost effective. The latest results show further evidence of clinical viability and brings us another step closer to natural tooth repair.

の所を曲解して

その結果、「患者への実用化は十分に可能」と判断されました。

としたのではという意見を頂きました。

確かにその可能性はありますが、曲解というかもうなんというか・・・

論文のアブストを読めば臨床試験ではない動物実験であることは明白であり、それを無視した結論ありきの意訳は悪意があると思います。

 

実際のKCLの発表を確認

上記記事にリンクがあった大元のKCLの発表に関しても確認した。

https://www.kcl.ac.uk/news/further-evidence-shows-clinical-viability-of-natural-tooth-repair-method-1

KCLの発表はほぼ論文の要約であり、人で実用化できたなんてことは一切記載がない。
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フェイクニュース

viabilityの誤訳だけならまだしも、元々の英文にはない
その結果、「患者への実用化は十分に可能」と判断されました。

という文章を入れている以上、わざと文章を改編しているのは間違いなく、この歯の再生うんぬんが臨床試験で成功みたいな記事は間違いなく悪意のあるフェイクニュースであると結論づける。

 

しっかり確認もせず釣られる人達

これをTwitterで流した人がいてそれに食い付く人達。

医療利権とか医療マフィアとか言いたい放題だが、歯を削られるには当然それなりの理由があるわけで自分の非が全くないのに削られたなんて思ってる人達なんだろうか・・・。

そういう人達だからこそ釣られるのか・・・。

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まとめ

まあ、正直にいうとこういう材料の発表は年に何千と学会で発表され、そのうちのある程度の割合が論文になる。
しかし殆どは実験レベルで実際の人の口の中には到達できるものは殆どない。
そういった材料のあくまで1つであるわけだが、それを大幅に拡大解釈してフェイクにしたのがこの記事と言うことになるだろう。
 
皆さんも気をつけましょうね!!!