次亜塩素酸水は本当に有効なのか
消毒用エタノールの供給が厳しくなり俄然注目を浴びるようになった次亜塩素酸水。
それに便乗して次亜塩素酸水を売りつけようとする歯科医院があり、それに関して告発してきた。
これを書いてから、色々な方から次亜塩素酸水に関して情報を頂くようになった。
大変ありがたいことである。
そして先日よたろう先生の次亜塩素酸水に関する極めつけのブログが公開されたのでこれで完璧に終止符がうてると思ったが、一応情報のありかを集積しておかないと忘れてしまうので備忘録として残しておくことにした。
厚労省にも問題がある
一番の問題は厚労省が次亜塩素酸水がさも効果絶大かのように結論づけてしまった事による。
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8k.pdf
これの都合の良い所だけ抜き出すとさも効果が絶大なように宣伝する事ができる。
よく使われるのが以下の表でさも次亜塩素酸ナトリウムよりも低濃度で同等の抗菌・抗ウイルス活性があるという宣伝に使われている。
しかし、実際は使用には条件が付与されている。
次亜塩素酸水をジャバジャバ流しながら使用するということ、また当然電解水なので作ったら早く使用しないといけないこと、などが条件なのだがそういった事に言及しないでお勧めしているサイトがごまんとある。
実際、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムがどう違うのか、ということは以下のyoutubeを参照して欲しい。これは非常にわかりやすい。
【化学者が解説】次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違い・仕組み・注意点【化学解説系Vuber】
よたろう先生のブログ
こういった事をTwitterでつぶやいていたら、よたろう先生が以下の大変素晴らしいブログを書いてくれた。(よたろう先生が鍵をかけたため、現在閲覧不可)
このブログはかなりの長文だが、本当に素晴らしい内容なので是非読んで欲しい。
特に歯科関係者は絶対に舐めるように読んで欲しい。
このブログとyoutubeにより次亜塩素酸水が周囲から過大な評価を受けていることがおわかり頂けると思う。
最低でも次亜塩素酸水を使ったうがいなどを勧めている歯科医院は現時点の法律や認可の観点から色々おかしいとしか言い様がない。
大体有機物に当たったらすぐに活性がなくなる次亜塩素酸水がバイオフィルムを超えるなんて絶対に思えないしね。
このブログを紹介したところ、また貴重な情報を頂いたのである。
歯科医院で販売されている次亜塩素酸水の代表であるPOICウオーターについてである。
次亜塩素酸水を売っている歯科医院は
次亜塩素酸水によるうがいは虫歯、歯周病予防に効果がある
と宣伝しているがPOICウオーターは薬機法を通っておらず宣伝はしてはいけないという保健所のお墨付きがあるというのである。
これ、次亜塩素酸水の予防効果を宣伝している歯科医院は全て医療広告ガイドライン違反という事で通報可能なんじゃないですかね(笑)
勿論うがいをするとCOVID-19予防になる!!という歯科医院もな
閣議でもついに
ちなみに消毒用エタノールの不足により次亜塩素酸水に関する手洗いが注目されているようだが、これに関しては以下の論文がある。
衛生学的手洗い法における擦式アルコール消毒剤と電解酸性水の比較検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei1986/12/2/12_2_103/_article/-char/ja/
これによると次亜塩素酸水を90秒、750ml以上手に噴霧し続けながら手洗いをするとウェルパスなどの擦式アルコール消毒剤を用いた手洗いと同等程度という結果が出ている。
テレビをみているとちょっとしたペットボトルの大きいやつみたいなのに次亜塩素酸水を入れて配給しているけど
手洗い1回で750mlも次亜塩素酸水使用
するとしたら、1回の手洗いでなくなっちゃうね!!
そしてやっと閣議においても次亜塩素酸水による手洗いについて否定的な見解が出されたようだ。
正直自治体が配布したりするのに長蛇の列ができているのをみてああああ・・・と思っていたのでこれをみんなでしっかり広めていきたいところである。
第201回国会 147 次亜塩素酸水を手指の消毒に活用することに関する質問主意書
回答
お尋ねの「次亜塩素酸水」については、現時点においては、手指の消毒に活用することについての有効性が確認されていない。なお、アルコール消毒液の不足については、厚生労働省及び経済産業省において、身の回りを消毒するための方法についてポスターを作成し、当該ポスターにおいて「石けんやハンドソープを使った丁寧な手洗いを行ってください。」、「手洗いを丁寧に行うことで、十分にウイルスを除去できます。さらにアルコール消毒液を使用する必要はありません。」等の内容を示すなどの取組を行っているところである。
二について
お尋ねの「水と食塩から安価かつ大量に次亜塩素酸水を生成できる装置」については、具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。
結論
普通にしっかり手を洗えばいいし、消毒用エタノールがあればそれを使用して色々な所を消毒したが方がいい。次亜塩素酸水はあくまでおまけのおまけ。
そしてこれでうがいしろ、という歯科医院に通院することを私はお勧めできない。
次亜塩素酸水は確かに食品の消毒に使用されるが、食べる段階の商品には含まれていてはいけない、つまり口の中に入ることが想定されていない、また薬機法も通っていない。口腔内の複雑なバイオフィルムに対して効果があるというエビデンスも不足しており、そういった商品をさも効果があるといわんばかりに勧めてくる歯科医院をお勧めできるわけもないのである。
追記(2020/05/29)
物理化学の専門の先生が素晴らしいブログを書いてくれました。
これは必読。
また森永乳業も次亜塩素酸水を作る装置を売っているのだが、このfaqは非常に分かりやすいので、次亜塩素酸水に興味がある方は参考にして欲しい。
実際どれぐらい次亜塩素酸水が持つのか?などということが記載されている。こういったデータはFAXなどでごり押ししてくる業者の数字は全く信用できないので、大企業がしっかりデータを示してくれているのは有り難い。