(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集

日本語が不自由な歯科医師のろくでもないお話 

感染症の世界史という名著

ふと本屋で

普段は医学書かマンガしか読まない私。

ある時、ふと立ち寄った本屋で1冊の本に見入ってしまった。

 

それがこれ

感染症の世界史

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最近、麻疹が流行ったり反ワクチン一派がinstagramで一大勢力になったりと色々感染症の話には事欠かない。

しかし、自分はその感染症の何を知っているのか?

と言われるとまあたいして知らないわけ。

ふと本を手に取りペラペラ数ページ読んで、即決。

これは絶対読んでおかないといけない!

脳がそう言ってた。

 

 

目次

2014年の本で、ちょうどデング熱が代々木公園で流行った時期+エボラ出血熱がアメリカなどアフリカ以外に拡散してパニックになった頃であり、序章がそこから始まっている。

 

この目次だけみても気になる内容ばかりだ。

まえがき――「幸運な先祖」の子孫たち

序 章 エボラ出血熱とデング熱――突発的流行の衝撃
1.最強の感染症=エボラ出血熱との新たな戦い
2.都心から流行がはじまったデング熱

第一部 二〇万年の地球環境史と感染症
第一章 人類と病気の果てしない軍拡競争史
第二章 環境変化が招いた感染症
第三章 人類の移動と病気の拡散

第二部 人類と共存するウイルスと細菌

第四章 ピロリ菌は敵か味方か――胃ガンの原因をめぐって
第五章 寄生虫が人を操る?――猫とトキソプラズマ原虫
第六章 性交渉とウイルスの関係――セックスがガンの原因になる?
第七章 八種類あるヘルペスウイルス――感染者は世界で一億人
第八章 世界で増殖するインフルエンザ――過密社会に適応したウイルス
第九章 エイズ感染は一〇〇年前から――増えつづける日本での患者数

第三部 日本列島史と感染症の現状

第十章 ハシカを侮る後進国・日本
第十一章 風疹の流行を止められない日本
第十二章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病
第十三章 弥生人が持ち込んだ結核
終 章 今後、感染症との激戦が予想される地域は? 

 

実際読んでみて

いや、ほんと2日ぐらいで読んでしまった。

内容はあくまで一般書なので、医療業界にいなくてもわかるように書かれてある。

というか非常にわかりやすい。

なので、歯学部入りたてでもいいし、医学部入りたてでもいいし、一般人でもいいし、むしろ自然派を自称するママにも読んで欲しい。

 

感染症と人類の戦いの歴史をまざまざと見せつけられる。

ほんと、いままで感染症たいして知らないくせに語ってましたごめんなさいレベルだよ。

この本の面白いところはちょこちょこ豆知識が出てくるところ

正露丸はなぜ正露丸という名前なのか?

とかそういうの。

 

自分的に印象深かったところ

 

113ページから抜粋

十八世紀のカナダでは、イギリスやフランスが先住民を効率的に殲滅する方法として、ハシカ患者の衣服を買い集めて彼らに配った記録が残されている。それらの部族は現在では完全に殲滅して、痕跡すらとどめていない

イギリスやフランスは十八世紀から細菌兵器使用していたと。

ハシカでも周りが免疫なければ効率良く全員抹殺できて、そういう歴史が実際あったことを知るべきである。

今日、ハシカで大混乱にならないのは医療レベルの向上も勿論だが、多くの人がワクチンを打っているからであり、大混乱にならないからワクチンを打たなくてもいい、というのは大きな間違いだと思う。そして日本ではワクチン未接種率が案外高い・・・。

 

291ページから抜粋

風疹にかぎらず「ワクチンで防げる感染症」(VPD)の予防については、日本の国際的評価は先進地域のなかで最低レベルにある。(中略)ハシカ、水ぼうそう、おたふくかぜ、結核などが流行するのは先進地域では日本ぐらいのものだ。

日本のワクチン摂取率は低く、海外旅行で流行らせる側である。日本のワクチン行政は後手後手すぎるよ。厚労省何やってるの?というレベル。

 

67ページから抜粋

抗生物質による水質汚染は、水を通して感染する細菌が環境中で耐性を獲得することにもつながる。(途中略)。実は私たちも耐性菌をつくりだすのに、知らずに貢献している。服用した薬はすべてが体内で代謝されるわけではなく、効果を維持したまま排泄され、トイレを通って下水に流れ込む成分も多い。これも河川や海水を汚染する。

これにより耐性菌や耐性をもつウイルスが生まれる可能性があるようだ。

安易な医療者側の投薬はこういう所まで影響があるのかと愕然とした。

 

感染症により多くの人が命を落としてきた。

インフルエンザにより戦傷者よりも感染による死亡者が多くなってしまい、第一次世界大戦の終結が早まったほどだ。

そしてインフルエンザは今もどんどん新しい型が出てきている。

ハシカや風疹だって馬鹿にできる病気ではない。

適切にワクチンを接種しない、させない、ということはある意味最悪死んでもいい、後遺症が残ってもいい、と言ってるようなものだし、未接種者が感染源になり人に迷惑をかける可能性を考慮していないと思う。

 

私は大学時代にこういった事をしっかり習った記憶が全く無い。

今の大学では講義があったりするのだろうか?

本当に読んで良かった、と久々に思った一般書だった。

ゴールデンウィーク暇だあ、という皆さん、是非手に取って読んでみて頂きたい。

 

AMR対策

薬剤耐性による脅威は刻々と迫ってきている。

細菌やウイルスが耐性を獲得するスピードは新薬が出るスピードを凌駕するようになってきている。いずれ、自分もこの抗菌薬効かないなんてことが起こりえる。

そういった事態を少しでも遅らせるためにAMR対策が推進されている。 

歯科医療者にできるのは安易に抗菌薬を出さないということだろう。

もし、出す場合においてもガイドラインに準じて処方すべきかと思う。

 

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2016―歯性感染症―

http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_shisei.pdf

 

また、以下の本をしつこくお勧めしている。

最新版のみお勧めしているので注意して頂きたい。

歯科におけるくすりの使い方2019-2022

https://amzn.to/2R8rl2Q

この本、辞典的に使う物なので全部読みきる必要は無いし、自分もすべてを読んでいないのだが、是非抗菌薬のところは読んで欲しい。というか、第1章の抗菌薬のところだけで9180円の価値があると思う。

新しければスペクトルが広ければ抗菌薬はいいに決まってるだろ!は大きな間違いである。ターゲットとする菌にあわせた抗菌スペクトルを持つ抗菌薬をチョイスし正しい使い方をするべき。

吸収率がかなり悪い第3世代セフェムをただ漫然と出し続けるのは耐性菌を作るだけだ。インプラント後にニューキノロン1週間とか緑膿菌や大腸菌を相手にしているんですか?あなたのインプラントは!!?。

短期間のニューキノロン投薬で案外あっさり耐性株できるぞという報告もある。

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抗菌薬は新薬が少なく乱用は耐性菌を産み、いざという時に効かない。

1人耐性になってもその人が死ぬだけ、ではなく、耐性菌は耐性の情報を水平的に他の細菌に伝達するので、近隣に耐性が増える可能性がある。

癌の死亡者数をいずれ耐性菌による死亡者数が抜く、と言われている。

あなたも私も何十年後にクリティカルな多剤耐性の感染症で死ぬかもしれない。

それでも口腔内の一般的な症状で第3世代セフェムやニューキノロンを出し続けますか?