目次
今回は国公立
過去3回において私立大学の現状について書いてきた。
国公立大学については総合的な現状というよりは国家試験の結果メインとなる。
なぜかというと私立ほど学生数を裏で操作している大学が殆どないため、そこまで裏事情を書く必要が無いからだ。
なので、タイトルも歯科医師国家試験合格率推移となっている。
国公立大学は歯科医師国家試験の合格率はかなり高い。
今回の歯科医師国家試験においても国公立現役の平均は87.5%であり、私立平均の76%とはかなり差がある。
しかも私立は手厚い教育だが国家試験にいきつくまでに相当学生数が絞りこむので、実質的にはもっと合格率に差がある。
それに対して国公立は進級基準も私立より緩いし学生任せ。
よくも悪くも放任主義の所が多い。
偏差値が高く勉強習慣がしっかり確立しているためそれでもたいして問題は無い。
ではどの国公立大学に入っても6年でしっかり歯科医師になれるか?というと実はそうではない。
また、入学時の偏差値ボーダーの低下傾向が認められる大学がある。
語句がよく解らない方は
こちらを参照
表について
表の合格率の青字は全国平均以上、赤字は全国平均以下
出願者数ー受験者数は出願後に留年になったであろう人数
補正合格率=合格者数/志願者数 表の合格率=合格者数/受験者数
6年ストレート合格率は70%以下を赤字
総合は101から12年間の現役、浪人の国家試験合格率の総計
偏差値に関しては河合塾の2019/10/05当時の前期日程のデータを使用した。
偏差値は今後変動する可能性がある。
北海道大学
偏差値:57.5(センターボーダー79%)
定員:43名+2年時に10名で53名
H28年度:受験者数182人 合格者数51 倍率3.57 入学者数43
H29年度:受験者数167人 合格者数52 倍率3.21 入学者数43
H30年度:受験者数176人 合格者数46 倍率3.83 入学者数42
R1年度:受験者数204人 合格者数44 倍率4.64 入学者数43
国家試験合格率の推移
基本的に国家試験の合格率は優秀である。111のように数年に1回やや低迷することもあるが、 それでも全国平均を下回ることはない。
6年時の卒業に関する数字の操作は無い模様。
浪人の合格率は50%をやや超える程度であり悪くはないが年によっては悲惨な合格率の時もある。
総評
入試倍率が4.64倍とかなり高く国公立歯学部の中でも人気で入学はなかなか難しい。
6年ストレート合格率は65%程度まで落ち込む年もあるので、留年や休学が全く無いということではない。5年生で留年ポイントがあり、おそらくCBTと考えられる。
下4割に入らなければ問題なく6年で歯科医師になれる大学。6年時の国家試験成績も比較的安定している。
東北大学
偏差値60.0(センターボーダー78%)
定員:53名
H28年度:受験者数160人 合格者数63 倍率2.54 入学者数50
H29年度:受験者数163人 合格者数59 倍率2.76 入学者数57
H30年度:受験者数165人 合格者数60 倍率2.75 入学者数53
R1年度:受験者数150人 合格者数57 倍率2.63 入学者数53
国家試験合格率の推移
乱高下が激しい大学である。108や111のように全国平均スレスレのような年もあれば112のようにほぼ100%に近い時もある。
しかし112は他の年度に比べると受験者数が少なく、5年までの間に底辺層がカットされたため合格率が良かったと考える事もできる。実際112の6年ストレート合格率はあまり良くはない。それを考えると112は特別なのではないだろうか?
総評
入試倍率は大体2.5倍で推移しており、偏差値は60程度必要である。
留年休学者の割合は国公立では高めの17.5%であり、3年と5年あたりに壁がある。
6年ストレート合格率もやや不安定であるが、それでも下位4割に入らなければ6年で大体歯科医師になれる大学である。
東京医科歯科大学
偏差値62.5(センターボーダー83%)
定員:53名
H28年度:受験者数195人 合格者数63 倍率3.10 入学者数53
H29年度:受験者数180人 合格者数58 倍率3.10 入学者数53
H30年度:受験者数192人 合格者数58 倍率3.31 入学者数53
R1年度:受験者数187人 合格者数58 倍率3.22 入学者数51
国家試験合格率の推移
109~111までの3年間は合格率95%付近と素晴らしい成績を残したが、112ではやや下がった。いままで続けてきた6年ストレート合格率70%以上も112で途切れてしまった。やや息切れという感じだろうか。
6年時の学生数の操作はおそらく行われていない。
浪人の合格率はかなり高い方だが、ここ2年は不調である。
総評
関東に1校しかない国公立ということもあり偏差値は62.5と歯学部ではトップクラスであり、倍率は3倍はキープしているため入学には学力が必要である。
留年休学者の割合は16.0%と国公立の平均程度であるが5年生のおそらくCBTが壁である。それ以外はおそらくあまり留年しない。
111までの国家試験合格率はできすぎだったのかもしれない。今年の6年生の留年休学者の割合は18.6%、5年生に至っては29.7%も存在し、113で6年ストレート合格率70%をキープできたとしても114では絶望的である。CBTの基準が厳しくなったのだろうか?どちらにしても113,114あたりの合格率は厳しい可能性がある。
新潟大学
偏差値55.0(センターボーダー77%)
定員:40名
H28年度:受験者数194人 合格者数46 倍率4.22 入学者数40
H29年度:受験者数132人 合格者数45 倍率2.93 入学者数40
H30年度:受験者数164人 合格者数44 倍率3.73 入学者数40
R1年度:受験者数145人 合格者数44 倍率3.30 入学者数40
国家試験合格率の推移
108では全国平均を下回り、それ以後もあまりパッとしなかったが112では95%を叩き出した。
この大学の特徴は殆ど留年しないということである。留年せずに卒業するために国家試験の合格率=6年ストレート合格率となっている年もある。6年ストレート合格率は他の国公立を寄せ付けないほど優秀である。
浪人の合格率はあまり良くないので浪人してはならない。
総評
偏差値は55、倍率は3倍台であり他の国公立と比較すると穴場なのかもしれない。
全体的な留年休学者率は7.3%であり全国で最も留年休学しない大学である。6年ストレート合格率は調査開始から70%以上をキープしておりこれは新潟と九州歯科の2校しかない。
殆ど留年しないということからも歯科医師に最も近い国公立と考える事もできる。
大阪大学
偏差値60.0(センターボーダー82%)
定員:53名
H28年度:受験者数129人 合格者数58 倍率2.22 入学者数53
H29年度:受験者数119人 合格者数57 倍率2.09 入学者数53
H30年度:受験者数168人 合格者数57 倍率2.95 入学者数53
R1年度:受験者数118人 合格者数54 倍率2.19 入学者数53
国家試験合格率の推移
合格率は凄くよいわけでもないが、悪くもないという中間ゾーンをキープしている。 他の大学が落ちているがマイペースに合格率を維持しているという感じ。
112では久々に90%を超えた。
6年ストレート合格率は107では60%を割っていたが、ここ最近は70%を超える年も出てきており改善傾向が認められる。
浪人の合格率は高いので浪人してもなんとかなりそう。
総評
医科歯科が東の雄なら阪大は西の雄。偏差値は60をキープしているが、倍率が2倍ぐらいしかないのはやや寂しい感じがする。
全体的な留年休学者の割合は19%とやや高めであるが、殆どは2年時の壁であると考えられる。以前教えて貰ったがなんかの教科が異常に厳しいとかなんとか。そのせいで6年ストレート合格率も低い状況であるが、近年はやや改善傾向が認められる。
どの年でもある程度の合格率はあげることから地力はある。
岡山大学
偏差値57.5(センターボーダー79%)
定員:48名
H28年度:受験者数125人 合格者数51 倍率2.45 入学者数48
H29年度:受験者数126人 合格者数50 倍率2.52 入学者数48
H30年度:受験者数148人 合格者数51 倍率2.90 入学者数48
R1年度:受験者数133人 合格者数49 倍率2.71 入学者数48
国家試験合格率の推移
数年に1度沈むが、ここ3年は非常に安定した成績を残している。 10年前ぐらいは国公立のなかでは合格率は奮わない方だったが、今は非常に良い方である。
6年時の学生数の操作はなく、6年生ではほとんど落ちない。
6年ストレート合格率はここ3年間非常に高い数字を残しており優秀である。
浪人の合格率は高く浪人しても挽回できる。
総評
偏差値は57.5、倍率は3倍未満と国公立のなかではそれほど難易度が高いわけではない。
全体的な留年休学者率は10%を切っており、国公立の中でもあまり留年しない大学である。その中でも5年のおそらくCBTが壁で底辺層が留年する。
あまり留年せずそのまま高い国試合格率を保っていることから、6年ストレート合格率は非常に優秀である。
広島大学
偏差値60.0(センターボーダー78%)
定員:53名
H28年度入学試験:受験者数287人 合格者数54 倍率5.31 入学者数53
H29年度入学試験:受験者数276人 合格者数56 倍率4.93 入学者数53
H30年度入学試験:受験者数214人 合格者数58 倍率3.69 入学者数53
R1年度入学試験:受験者数266人 合格者数56 倍率4.75 入学者数53
国家試験合格率の推移
10年前は非常に優秀な大学だったが、最近は国公立の中では中堅から下位をウロウロしている。
6年ストレート合格率は5年連続で70%を下回っており、国公立では悪い方である。
6年生の数字の操作はおそらくなく、ほぼ全員卒業できる。
浪人の合格率はあまりよくないので浪人は避けたいところ。
総評
偏差値は60で倍率は5倍近い年もある。かなりの人気であり入学するのはかなり難しい。
そうやって厳選されてきているはずだが、留年休学者率は20%を超えており、国公立の中では1,2を争う。3年時に大きな壁があるが、案外1年でも落ちる。
そうやって揉まれながら6年生まで上がってきても国家試験で落ちる層がある程度存在するため6年ストレート合格率もあまり良くない。
入試時の人気、倍率と国家試験合格率は一致しないという典型例の大学である。
徳島大学
偏差値60.0(センターボーダー76%)
定員:40名
H28年度:受験者数158人 合格者数44 倍率3.59 入学者数40
H29年度:受験者数188人 合格者数43 倍率4.37 入学者数40
H30年度:受験者数166人 合格者数42 倍率3.95 入学者数40
R1年度:受験者数157人 合格者数43 倍率3.65 入学者数40
国家試験合格率の推移
112ではなんとか85%を超えたが、これは出願前に数名留年させて出願者数を圧縮したことにより達成されている。実際出願者数はここ数年からするとかなり少ない。
そのため実際の合格率はもっと低いと考えられるため額面通りには評価できない。
そういったことを考慮するとかなり国家試験合格率は悪いと言わざるを得ない。
ただし、6年ストレート合格率は107の45%からはかなり回復しており、ここ2年は70%台である。
浪人の合格率はあまりよくないので浪人は避けるべきである。
総評
四国に1校だけのためか偏差値は60、倍率は4倍近く競争率は高め。
留年休学者の割合は18.3%で国公立のなかでは高い方であり、比較的低学年から留年する。
6年ストレート合格率は107において国公立では驚異的な45%を叩き出したが、ここ2回は70%を超えており及第点である。
今年も去年と同時期での卒業判定なら出願者数を圧縮する事になる。調べたが今年の卒業確定がいつかはよくわからなかった。意図的かどうかは関係なく、こういった誤解を招くような行為は避けて頂きたいと思う。
九州大学
偏差値57.5(センターボーダー79%)
定員:53名
H28年度:受験者数176人 合格者数59 倍率2.98 入学者数52
H29年度:受験者数213人 合格者数55 倍率3.87 入学者数53
H30年度:受験者数117人 合格者数56 倍率2.09 入学者数53
R1年度:受験者数184人 合格者数57 倍率3.23 入学者数52
国家試験合格率の推移
国家試験合格率は安定感に乏しい。おそらく留年率が高いことが影響しているだろう。
6年生は必ず何人かは留年するが、そうやって微妙に絞っても国家試験でさらに落ちてしまう。
6年ストレート合格率はここ5年で60%台が3回とやや低め。
浪人の合格率はかなり高いがここ2年はいまいちである。
総評
偏差値は57.5、倍率は去年2倍ぐらいまで下がったが、今年は3倍を超えている。
留年休学者率は国公立トップの21.7%。その多くは1年時での留年である。
留年率の高さから当然6年ストレート合格率は低くなっている。6年時にわずかに学生を絞って卒業させるが、合格率はよいわけではない。
6年で歯科医師絶対という方はあまりお勧めできない。
長崎大学
偏差値60.0(センターボーダー78%)
定員:50名
H28年度:受験者数181人 合格者数52 倍率3.48 入学者数50
H29年度:受験者数257人 合格者数55 倍率4.67 入学者数50
H30年度:受験者数175人 合格者数50 倍率3.50 入学者数50
R1年度:受験者数260人 合格者数50 倍率5.20 入学者数50
国家試験合格率の推移
110,112と合格率が全国平均を下回っており、かなり厳しいと言わざるを得ない。国家試験合格率に関して言えば国公立最下位と言っていいだろう。
6年生の留年等はあまりなかったが、今年すでに出願前に4名ほど切られたという情報を得ている。出願前留年採用らしい。
6年ストレート合格率も108~110まで50%台。ここ2回回復してきたがそれでも60%台後半ぐらいで他校と比較すると一段落ちる。
浪人性の合格率は可もなく不可もなくだが、112ではかなり悪かったので注意が必要である。
総評
入試時の偏差値は60、倍率は5倍を超えておりかなりの人気である。前期試験がセンター試験のウェート60%で2次試験が英語と面接、数学と理科から1つ選択という他の大学より受験教科が少ないということで人気のようだ。
そのせいかどうかわからないが、国家試験の合格率は抜けて悪い。
全体的な留年休学率は14.2%であり国公立平均レベルである。3年生と5年生に壁がありそう。
6年ストレート合格率は私立である東京歯科大学に惨敗している。その原因はやはり国家試験で落ちる人が多い、ということであり国家試験への対応ができていないことが考えられる。安易に6年生を間引けば確かに合格率は少し上がるかもしれないが根本的な解決にはならない。
6年で歯科医師になる、ということが目標なら最もお勧めできない。
鹿児島大学
偏差値55.0(センターボーダー79%)
定員:53名
H28年度入学試験:受験者数185人 合格者数56 倍率3.30 入学者数53
H29年度入学試験:受験者数145人 合格者数58 倍率2.50 入学者数53
H30年度入学試験:受験者数194人 合格者数61 倍率3.18 入学者数53
R1年度入学試験:受験者数190人 合格者数53 倍率3.58 入学者数53
国家試験合格率の推移
国家試験の合格率はあまりよくない。国家試験で結構な人数討ち死するため、合格率は毎年下から数えた方が早い。
ただし留年率が低いため6年ストレート合格率自体は高い。
108や109では6年時に留年させたが最近はそういうことはしていないようだ。
浪人の合格率は可もなく不可もなく、といったところ。
総評
偏差値は55.0、倍率は3倍をやや超える感じであり、他校と比較すると狙い目なのかもしれない。
全体的な留年休学者率は7.4%とほぼ留年しないが、可能性があるとすれば5年生。おそらくCBTだろう。留年しない傾向は以前から続いており、国家試験の合格率と6年ストレート合格率が逆転している年もあるぐらいだ。
6年ストレート合格率は109を除いて70%を超えており、ある程度優秀である。
偏差値や入りやすさ、6年ストレート合格率などを踏まえるとバランスがよい大学といえそう。 問題は附属病院の施設の老朽化やその立地などか?
九州歯科大学
偏差値57.5(センターボーダー78%)
定員:95名
H28年度入学試験:受験者数451人 合格者数99 倍率4.56 入学者数95
H29年度入学試験:受験者数459人 合格者数96 倍率4.78 入学者数95
H30年度入学試験:受験者数449人 合格者数100 倍率4.49 入学者数95
R!年度入学試験:受験者数404人 合格者数98 倍率4.12 入学者数95
国家試験合格率の推移
最近の合格率はあまり良いとはいえない。 中盤の底ぐらいのレベルである。
以前、出願前に数名留年させたことがある。現在は出願前の数字の操作は行われていないようだが、カリキュラム的には11月までに卒業判定を出すことは可能と考えられるため注意が必要である。
新潟大学と九州歯科大学のみが6年ストレート合格率は6年連続70%をキープしている。
浪人の合格率はよいとはいえない。
総評
唯一の公立校であり、国公立で最大の学生数を誇る。他大学が定員を削減したのに定員を削減していない。
偏差値は57.5で倍率は4倍を超え、かなりの人気である。
全体の留年休学者率は8.8%であまり留年しない。3,4年ぐらいに少し壁があるのかないのかぐらいである。
留年も少なく6年ストレート合格率の安定感は推せるだろう。
まとめ
正直に言うと国公立大学をみていると
殆ど留年させずに卒業させる大学の方が実質的な数字は優れていると思う。
新潟大学や岡山大学などがよい例である。
国公立に進学する学生は自分で勉強できるし、ある程度定期的に適切な壁を設けてあげればそれに向かって努力する。
異常に厳しくして留年率を上げてしまうと、留年生はクラスの雰囲気を悪くしがちだし、留年生自体もクラスに溶け込むための努力などをしても孤立したりと元々の能力を発揮することができなくなるのではないだろうか?と思った次第である。
国公立はある程度学生を放流しつつ、適度に勉強する壁を与え続けるぐらいがちょうど良いのかな?と思った。
まあ留年させない方が税金もかからないかなっっと。
次はあれいきますよ。
私立大学
参考資料
このデータのまとめは
を参照のこと