(続)とある最底辺歯科医の戯れ言集

日本語が不自由な歯科医師のろくでもないお話 

歯周病と癌リスク

とある記事が回ってきた

先日Twitter上でフォロワーさんがこういう記事をあげていた。

www.michi-iwasawa.com

 

歯科のネット上の口コミはステマが多すぎて信用するな!

という日頃このブログでも指摘していることが書かれている。

どうもこの方は医療ジャーナリストで癌とかに関しても多く書いているようだ。

 

最近は歯科関係において色々書いているみたい。

f:id:spee:20180729061628j:plain

 

記事の内容でひっかかった

記事だが軽快にネット上の巧妙なステマ例を挙げていく。

そして最後の所でこういう内容になる。

f:id:spee:20180729061806j:plain

最初は私も歯周病と膵臓癌は全く関係ないのか、と思った。

が、歯周病と頭頚部癌などの発症リスクなどに関しての関連性

ピロリと胃がん

などを考えると全身を駆け巡る歯周病菌と癌リスクについて何か論文はないのか?

と思ってググってみることにした。

 

ちゃんと論文がある

pubmedで

periodontitis  cancer risk

などで検索するとひっかかった。

 

歯周病と膵臓癌の関連性に関しての論文も結構ある。

他の癌との関連についての論文もあった。

f:id:spee:20180729063422j:plain

 

どうやら、今現在、その機序はまだ確定しないものの、歯周病と一部の癌リスクは関連する、というのが一般的になってきているようだ。

オープンアクセスの論文で信頼性があるとはいえないが、レビューもあった。アブストしか閲覧していないので手法が正しいかどうか検証していない。

f:id:spee:20180729063051j:plain

これはあくまでふーん程度の内容だが・・・ペリオがあると膵臓癌リスクは1.74倍らしい・・・。

 

 

単純に日本語で

歯周病 膵臓癌

でググったら出てきた

www.cancerit.jp

おおお、日本語訳してくれている。

ありがたや。内容を一部抜粋

Journal of the National Cancer Institute誌に掲載されたこの新しい研究で、研究チームは、コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究への参加の一環として7,466人の参加者に実施された総合的歯科検査のデータを使用し、その後1990年代後半から2012年まで参加者を追跡調査した。歯周炎が重度の参加者では、軽度から歯周炎がない参加者と比較して、がんを発症する相対リスクが24%上昇した。肺がんの場合に最も高いリスクが観察され、次は大腸がんであった。 

この関連は、歯周病診断に基づいた特定のがんリスクに対する検診を推奨するほど強いものではないと、ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院の疫学副学部長兼、ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターのがん予防管理プログラムの共同リーダーであるElizabeth Platz理学博士は述べた。「しかし、軽度から中等度のがんリスク上昇が複数の研究を通して続いているようです。したがって歯科医師は、患者に歯周病に関連するリスクがあり、がんもその一つであることを、伝えたほうがよいかもしれません」。

研究者らはまた、重度の歯周炎患者において、膵臓がんのリスクに統計学的に有意ではないが小幅な上昇がみられたことを明らかにした。これは本研究の筆頭著者であるタフツ大学医学部のDominique Michaud博士が主導する研究など、他の同様の研究でもみられる関連である。「膵臓は口に開口していませんが、細菌が臓器にいたるには他の経路もあります。例えば、もし細菌が出血した歯肉から血流に入れば、循環して臓器に沈着し、炎症反応を引き起こすかもしれません」とPlatz博士は言う。

 

というわけで一部の癌と歯周病が関連する、ということはどうも確からしい、ということはわかりつつあるようだ。

 

ただしこれでは足りない

ここで勘違いしたくないのは

歯周病に罹患しているとがんリスクが上昇するのは確からしいが、

(指摘があったので修正しました)

歯周病罹患者は特定の癌罹患率が未罹患者と比較すると高い、というのは事実のようだが、

歯周病を治療するとがん発症リスクが低下する

というエビデンスはない、ということだ。

つまり、最初の歯周病治療は膵臓癌を予防できるという歯科医院のサイトは誇大表現ということになる。

 

ただし、上記論文の

歯周炎が重度の参加者では、軽度から歯周炎がない参加者と比較して、がんを発症する相対リスクが24%上昇した。肺がんの場合に最も高いリスクが観察され、次は大腸がんであった。 

というところから可能性はありそうなので、今後の研究に期待したいところだ。

 

これは歯周病と糖尿病などにおいても誤った認識をされている先生がいるので注意したいところだ。

歯周病を治療するとHbA1cが有意に低下するかどうかに関しては確固たるエビデンスはまだないはず。

 

結論

この記事を書いた方がどこまでのエビデンスレベルをもってまったくのでたらめ、と書いたかは私は知りようがないし、安易な言葉使いをしている歯科医院のサイトは訂正されるべきだとは思う。

例えば

「歯周病と血管疾患(脳卒中や心筋梗塞)、全身のがんの一部は関連性があるという研究結果が多くなってきています。歯周病を放置するとそういった病気に罹患するリスクが高くなるようです。また歯周病などにより歯を多く失った人はそうでない人よりも寿命が短くなる傾向があることがわかってきています。美味しく食べて健康的に長生きするためにも歯周病の治療はおこなった方がよいでしょう。」

ぐらいなのかなっと・・・・。

 

今後は医療広告ガイドラインがあるのでこういった誇大な表現は早めに訂正するべき。 

 

終わりに 

最近は口の中の事だからこんな離れた所(膵臓とか)は関係ないですよ!なんて簡単に言えなくなった。調べたら論文があるんだもん。

しかし、口の中と全身の関連性、という言葉だけを悪用して口の中の問題がさも全身に影響があるかのように説明してあまり異常がない口の中を治療(というかボロボロに)する医院が実際あるのも事実である。大学病院で新患係をしているときにたまにみたものだ・・・。若いのにすべての歯がテンポラリーになっていてしかも咬合面がすべてフラット・・・・。信じられないかもしれないけど事実。

 

あ、歯周病と全身の関係についてはこちらの本をお勧めします。

ただし、AMAZONは品切れ中なんでシエン社等でお買い求めください。

歯周病と全身疾患―最新エビデンスに基づくコンセンサス 

https://amzn.to/2mOGacN

 歯周病と糖尿病の本はAMAZONにも在庫あります。